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世界の工場を脱した、と言わざるを得ない

シャオミ1万円台イヤフォンは安かろうじゃない「売れる音」

2016年05月22日 12時00分更新

文● 四本淑三

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3ドライバー「E1001」は中音域の厚い広帯域型

 今回の本命、1万3000円で買える3ドライバーのハイブリッド型「E1001」です。マットブラックとブラスを貴重にした配色はシックな印象。このモデルのみ、前面のノズル部分にもアルミニウムのパーツが使われていて、シンプルな外観ながら高級感もあります。

 また、1MOREの最上位機種だけあって、パッケージのおもてなしも最上級。磁石付きの箱のフタを開けると、説明書も含め、各種の付属品が小箱に分けられているという、ちょっと前のAppleを思い起こさせるパッケージになっています。そんなところにお金かけなくていいのに、とも思いますが。

 付属品は、シリコンのイヤーピースは本体装着も含めて6サイズ。それに遮音性の点で有利な低反発ウレタンのフォームチップが3サイズ付いてきます。そしてEO323と同じ収納ケース、ロゴ入りの航空機用アダプター、クリップという内容。

 ただし、パッケージ裏には、やや惜しい日本語表示も健在(実はちょっとうれしい)。

 さて、気になる音ですが、先に申し上げたとおり、ハイエンドも伸ばした、バランス重視の広帯域型。ただし、中音域のレスポンスが、かなり前に出た設定になっています。そのあたりは、同じドライバー構成のエレコム「EHP-R/HH1000A」と比べて、狙い目がはっきり違うのがわかっておもしろい。

 まず、エレコムはMMCX端子でリケーブルに対応するなど、マニア寄りの製品です。チューニングも、入力信号を残らず音にしてやろうという、気合の入った解像感が魅力。バランスド・アーマチュアを使った3ドライバーという構成を、低価格ながら活かし切った。そこが魅力なのですが、時として情報量が多く、すべてが耳の近くで鳴っているように聴こえはじめ、疲れてしまうこともあります。

 一方、1MOREはハウジングのデザインからしてコンフォート指向です。エレコムに対しては、開放型に近い中低域のエアー感が魅力。言い方を変えれば高域の解像感はほどほどに抑えられているわけですが、おかげで聴き疲れがしない。価格から言っても、広く音楽リスナーに向けて数を売りたい製品のはずで、中音域のレスポンスに重点が置かれた設定も、そう考えると納得です。

 ただ、これは1MODEのイヤフォン3製品に共通する欠点なのですが、エアー感のトレードオフとして、音漏れの大きさが挙げられます。ドライバー背面だけでなくノズル側にもチューニングホールが開いているので、耳につきやすい成分も漏れやすい。とはいえ、聴覚を害するような音量であれば問題ありません。音量は自分のためにも控え目に。



 さて、3製品を試した結論としては、やはり彼らは自分たちの強みを知っているのでしょう。それは安く量産できること。だから量販できるタイプのイヤフォンに仕上げたということです。しかも、リスニング用として至極まっとうな性能で。1MOREは侮れないどころか、相当にしたたかなメーカーだという印象が残りました。

 ところで、この原稿を書いている最中に、かつてシャオミのMiブランドで売られ「450万個以上の出荷記録」を持つという「Pistonシリーズ」を、1MOREブランドで復刻販売するというニュースが入ってきました。取り扱いはフリーウェイとe☆イヤホンから。このモデルも機会があれば試してみたいと思います。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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