日本法人のカントリーマネージャーに就任した藤田純氏が報告、事業戦略も説明
GitHubの国内展開が加速「顧客企業数はこの1年で70%増加」
2016年05月20日 07時00分更新
ギットハブ・ジャパン(GitHub Japan)は5月19日、新カントリーマネージャー就任に伴う記者発表会を開催した。設立から約1年が経過した同社のビジネス概況や今後の戦略、方向性について、カントリーマネージャーに就任した藤田純氏が説明を行った。
2000年以降、藤田氏はモトローラ、SAP、アビームコンサルティング、マイクロソフト、アピリオジャパンなどのIT各社で、ソフトウェア開発、ITコンサルティング、マーケター、営業企画、カントリーマネージャーといった多様な職務を経験してきた。エンタープライズ領域における経験も長い。
今年1月にギットハブ・ジャパン入りした理由について、藤田氏は「より多くの顧客が、モダンなソフトウェア開発手法へと移行していくことをお手伝いしたい」と考えたからだと語る。
日本法人設立から1年、“トラディショナルな大企業”でも徐々に採用進む
この1年間でギットハブ、そしてギットハブ・ジャパンは大きく成長している。
同社がホストするGitHub.com、オンプレミス/プライベート導入が可能なGitHub Enterpriseの両方を合計して、GitHubは現在、グローバルで1400万以上のユーザーが利用するサービスに成長している。ホストするリポジトリ数は3500万以上だ。ユーザー数とリポジトリ数を昨年6月時点の数字と比較すると、40~50%以上の伸びとなる。
企業や政府機関/自治体、大学などの顧客組織数も、現在はグローバルで6万以上に及ぶ。これはGitHubを有償利用している顧客組織だ。そのうち日本の顧客数は1400以上となっている。
藤田氏は、昨年6月の日本法人設立以降、GitHub Enterpriseの顧客組織数は70%増え、またGitHub.comのユーザー数(こちらは無償利用を含む)は50%伸びたと報告した。なお、GitHub Enterpriseの導入を公表している国内企業として、ヤフージャパンや日立システムズなどに加え、新たにLINEが加わっている。
藤田氏によると、当初はいわゆる“ネットテクノロジー系”の企業顧客がGitHubの採用に前向きだったが、最近ではそのほかの業種の“トラディショナルな大企業”でも、採用や導入検討が徐々に進んでいるという。その背景には、いわゆるビジネスの“デジタル変革”、ソフトウェアによる新ビジネスの創出に多くの企業が注目している現状がある。
「“すべての企業がソフトフェアカンパニーになる”という変化の波が、日本にも確実にやって来ている。これまでトラディショナルなビジネスを行ってきた大企業の方も、ソフトウェアを新たなビジネスの“武器”とするための環境をきちんと整えていかなければならないと考え、悩んでいる」(藤田氏)
ソフトウェア開発環境の改善だけでなく、ビジネス変革の起爆剤としても
藤田氏の経歴を考えると、今後のギットハブ・ジャパンはエンタープライズ顧客に注力していく方針なのではないかと考えてしまうが、藤田氏は必ずしもそうではないことを強調する。
「ギットハブは『世界中に存在する開発者に最高のサービスを提供する』というスタンス。エンタープライズ所属だろうと、オープンソース(OSS)コミュニティ所属だろうと、あるいは教育機関や政府機関の所属だろうと、すべての開発者に等しく、最高のサービスを提供していく」(藤田氏)
ギットハブ・ジャパンとしては、まずは日本のコミュニティにしっかりと根付き、そのうえで各コミュニティの間をつなぎ、全体を活性化させる「ハブ」としての役割も果たしていきたいという。
「たとえば、OSSコミュニティで生まれた先進的な開発手法をエンタープライズの顧客に紹介していく。その逆に、エンタープライズに所属する開発者の、OSSコミュニティへの参加を促していく。ギットハブの立ち位置ならば、そういった役割が果たせるのではないか」(藤田氏)
加えて、ソフトウェアの力で新しいビジネスを創出したいと考えている企業に対し、単にGitHub製品を提供するだけでなく、組織編成や業務プロセス、開発ツールなどの変革を包括的に支援できるようなエコシステムの構築も考えていきたいと語った。
「GitHubの企業導入は、必ずしも開発現場からのボトムアップで、というケースだけではない。トップからの号令で、というケースも出てきている。たとえば、アメリカの大手製造業メーカーなどでは、自らの強みをソフトウェアの力でスケールさせている。そうした変革を見た大手企業のトップの方は、自社のあり方に強い危機感を感じている。そこで、会社を変革するプログラムの仕掛けのひとつとして、GitHubの導入を決める企業もある」(藤田氏)
