クリエイターや投資家を悩ませる市場とコンテンツの問題
将来的にVRがスマホ並みに普及する、あるいはスマホを置き換える存在になるという将来像を描きつつも、実際にそうなるまでには5年、10年といった期間を要することが予想される。それまでの間、VR市場の牽引役として期待されるのが、やはりコアユーザーの多いゲーム産業である、という見解もまた、本カンファレンスの多くの登壇者の中で一致するところのひとつだ。20名あまりの登壇者のうちほとんどが、そのキャリアにおいて何らかの形でゲーム産業に携わってきているという事実も、そのことを裏付けている。
実際、現時点ですでに数えきれないほどのゲームメーカーがVRゲームの開発に着手し、Oculus Rift/HTC Vive/PSVRといったハイエンドHMDや、GearVR等のスマホ用VRアダプターを前提としたコンテンツ制作に取り組んでいる実情がある。その中で留意したいのが、Unityの伊藤氏が語った話だ。
それは、去る2月に北米で開催されたVision Summitにて、Unity TechnologiesのCEO、John Riccitiello氏が語った予測。それは、多くのアナリストが楽観的に想定するよりもVR市場の成熟はスロースタートになるが、その成長は指数的な曲線を描き、ある段階からは予想されるよりも急激に成長していくと考えだ。その当初の時期、およそ2020年くらいに至るまで予想よりも低成長となる時期を「Gap of Disappointment(失望ギャップ)」と呼ぶ。この期間を、コンテンツクリエイターをはじめとするVR関連事業者がどのように乗り越えていくかが鍵となる。
実際、Presence CapitalのAmitt Mahajan氏のような投資家陣も、「コンテンツ不足やコンテンツの配給に障害が多いことが現状の課題」と、現状のVRシステムの普及率や、市場環境においての難しさを語っている。同時に、その難しさ自体がスタートアップ企業が立ち上がるためのチャンスになるともいう。