CPUの冷却強化やビデオカードの水冷化を狙って簡易水冷から、カスタム水冷にステップアップするユーザーなど、導入している人がそれなりにいたカスタム水冷。
最近では、古くからPC向け水冷キットを販売しているThermaltakeから、久しぶりにカスタム水冷パーツ「Pacific」シリーズが登場したほか、水冷化した同社の魅せるPCの展示や、海外の水冷Mod PCなどが増え、注目度がアップしている。
そんなカスタム水冷の基礎知識から、導入や組み立て時の疑問、各種水冷ヘッドの取り付け、アクリルチューブを使った配管など、カスタム水冷についてのさまざまなことをお送りしていこう。
自由自在に組めるのがカスタム水冷の魅力
まず1回目となる今回は、カスタム水冷の魅力や基本を語っていこう。カスタム水冷の最大の魅力は、その自由度の高さ。空冷と同じく環境温度を下回ることはないが、水冷の冷却性能の要となるラジエーターの大きさや数次第によっては、CPU+ビデオカード×3などのハイエンド構成を余裕で冷却できる。
そのうえ、低速回転ファンの使用を想定したラジエーターと、低速かつ静圧のあるファンなどの組み合わせ次第で、冷却と静音性の両立も可能。ただ、“水冷=静音”というわけではない点は忘れないでほしい。
また、水冷は熱をラジエーターへ移動させ放熱する仕組みのため、ラジエーターをPC外部に設置できる。部屋のクーラーにラジエーターを取り付けてトコトン冷やしたり、巨大なラジエーターで、ハイエンド構成をファンレス運用したりといったことも可能だ。
そのほか、見た目にこだわる、小型PCを水冷化するなど、パーツの組み合わせで、自分の“こうしたい”を実現可能だ。
カスタム水冷で強力冷却
カスタム水冷の気になる冷却性能と静音性。2年ほど前に組んだCore i7-4770KとGeForce GTX 780 Tiを水冷化したPCの温度と騒音値を参考としてまとめた。なお、負荷テストにはOCCTのCPUとGPUテストを使用している。
冷却の要となるラジエーターには、360mmサイズのHardware Labs「Black Ice Nemesis 360GTS」を使いNoctuaファン×3基を搭載。スロベニアにある鉄板水冷パーツメーカーのEK WaterBlocks製水冷ヘッドや定番ポンプのドイツLaing製「D-5」(OEM品)などを使用している。
空冷時のCPUとビデオカードのクーラーは、あまり冷却性能、静音性が高くないインテル純正とNVIDIAリファレンスクーラーを使用しているのもあるが、水冷は圧倒的な冷却性能を発揮。
1コアだがCPUにも90%程度の負荷のかかるGPUテスト時も、CPUがしっかり冷却できている点に注目。冷却液はGPUを通ってからCPUに流れるようになっているが、CPUの最高温度は空冷時とほぼ同じになっている。
システム全体の騒音は、ビデオカードのクーラーが、昨今各社の主流となっているオリジナルGPUクーラーではないため、参考程度に見てもらいたいが、空冷時から4dBA程度ダウンした37.1dBAを記録している。ラジエーターファンやポンプ、PCケースなどで異なるが、カスタム水冷で静音性重視を狙えるのがわかるだろう。
カスタム水冷はデメリットもある
さまざまな魅力があるカスタム水冷だが、導入の難易度とコストが高くなっている。
難易度はマザーボードやビデオカードの基板デザインにあわせた専用水冷ヘッドや、ラジエーターだけでなく、ポンプやリザーバータンクの搭載スペースを備えるPCケースなどの登場により、カスタム水冷初期の1990年代後半と比べれば、かなり下がっている。
とはいえ、水冷パーツの入手性が悪い、水冷パーツ選びや組み立て手順の参考例が少ない(相談できるところが少ない)、水漏れ→PCパーツ破損(有償無償を問わず、修理不可なこともある)の可能性がある、メンテナンスが必須といった水冷ならではのハードルは依然として残っている。
コスト面はCPU水冷ヘッドや240mmラジエーターなどの基本的な構成なら、3万円を見ておけば余裕で組めるが、GPU、マザーボード(VRM、チップセット)の水冷化や、アクリルチューブ配管など、こだわりだすと、気がつくと総額が10万円を超えていたなんてこともある。