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高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み 第20回

人工知能が多くの職業を奪う中で重要になっていく考え方

2016年04月19日 09時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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ICTが発達してもテレワークがなかなか浸透しない理由

高橋 今回の対談の冒頭で、“物欲なき世界”にいたった背景には多分にインターネットを始めとするテクノロジーがもたらした人々の価値観の変容と幸福感の変質があるのではないかというお話をさせていただきました。そこで、菅付さんに今日ぜひご意見をおうかがいしたいのが、これだけ情報技術が発達したにもかかわらず、なぜテレワークが定着していかないのかということです。ヴィジョンとしてはかなり以前からもてはやされているのに、東京への一極集中はむしろ加速するばかりですよね。これ、どうしてなんでしょう?

日本政府は2020年までに「テレワークの導入企業を2012年度比の3倍に」「週1日以上の終日在宅労働で終業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上に」という目標を掲げている

菅付 それ、確かに難しい問題ですね。僕の周囲でもテレワークがうまくいっている実例もあればうまくいっていない実例もあり、「これが原因だ!」というはっきりした理由はわからないんだけれども、そもそもコミュニケーションというものは、とても三次元的で立体的な情報交換によって成り立っているような気がするんです。

 相手の顔を見たり相手の声を聞いたりはもちろんですが、なにかに触れたり、なにかを渡したり、声が大きかったり小さかったり、目をしっかり見ていたり視線をそらせていたり、ものすごく複雑で微妙な情報がやり取りされていると思うんですよ。特にクリエイティブな領域に属する仕事などの場合はそれが顕著で、いわゆるあうんの呼吸というか、ある程度のスピード感の中で言葉にならないお互いのインスピレーションの応酬のようなものがありますよね?

高橋 打ち合わせなどをしていても、「おっ、これ、結構みんなに刺さっているな」とか、その場の空気で感じるものがありますもんね。逆にみんなうんうん頷いているけれども、「ぜんぜんのってきてないな……」とか(笑)。

菅付 そうそう、「Something In The Air」という言葉がありますが、やっぱり同一空間でスタッフが顔を突き合わせて議論する重要性というのは確実にあるんですよね。それがテレワークだと「いまからPowerPointの資料送るから」とか「あれ、こっちのバージョンだと開かない」とか、密度の濃いSomething In The Airを全員が持続して共有することがなかなか難しい。まだまだ遠隔地同士でクリエイティブな仕事をスムーズに行えるようなスキルを、僕ら自身が身につけ切れていないんじゃないですかね?

高橋 なるほど、やっぱり現時点でテレワークに向く仕事と向かない仕事というのはあるんでしょうね。

菅付 フレームがきっちり決まっていて、明確な指示と必要な材料さえ揃っていればこと足りる仕事であればテレワークでもぜんぜん問題ないんでしょう。でも、僕らがやっている編集のような仕事はフレーム自体を作る仕事ですから、Something In The Airの瞬時の共有が必須の条件になってくるんだと思います。

高橋 そう考えると、まだまだ東京への一極集中は止まりそうもありませんね……?

菅付 またいろいろな人たちに嫌われるようなことをあえて言ってしまいますが(笑)、個人的に僕は東京への一極集中はまだまだ足りないと思っています。もっともっと東京への一極集中が進行して状況が深刻にならないと、みんな東京と地方の問題やこの国の未来について真剣に考えないですよ。いまの日本は克服しなければいけない問題が山積みになっているにもかかわらず、問題が熟し切るというか、大きな壁にぶち当たることをあの手この手で先延ばしにしているように思います。

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