移住は難しくとも、気軽な人の流れを
廃校からテレワークと地方創生へ、高畠町の「熱中小学校」
2016年04月01日 06時00分更新
地方から人が減り続けている。日本の人口減少や東京への一極集中などが原因だ。このままだと2040年には、多くの地方自治体が行政機能を維持できなくなってしまうとされる。
そこで取り組まれたのが、総務省「ふるさとテレワーク」である。
都会のいつもの仕事をそのまま続けられるよう、地方にテレワーク環境を整備。地方への移住や企業進出を促進し「新たな人の流れ」を創る。さらに移住者が地方に溶け込めるよう支援することで、その流れを一過性のものではなく「定着・定住」につなげる。
その実現可能性を検証すべく、全国15地域で実証実験が行われ、約180社の協力会社から合計約1000人が実際に移住。テレワークの地域への影響、効果や課題を洗い出した。「ふるさとテレワーク」は地方を救うのか? そんな各地での取り組みをレポートする。
今回は山形県高畠町。ここでは廃校再生プロジェクト「熱中小学校」を軸に地域活性化が進められており、「ふるさとテレワーク」もそこに組み込むように推進された。その詳細を高畠町、熱中小学校の両者に聞く。
過疎地に強力なコンテンツが突如出現
山形県の南東に位置する高畠町。山に囲まれた稔り豊かな「まほろばの里」として、山々や丘陵には古墳などの史跡が、平野から山間地にかけては、ぶどう、りんご、なしが栽培されている。特にワイン用ぶどう品種のデラウェアは国内生産量1位。地元の高畠ワイナリーをはじめ、食品加工業が盛んで、厳選された商品を「たかはたブランド」として訴求している。
そんな高畠町で話題となっているのが、中山間地域で廃校となった小学校を再利用し、「大人のための学校」として開校した「熱中小学校」である。各地から著名人を教諭に招き、地域住民をはじめとする生徒に、さまざまな個性的な授業を行う。その取り組みが、過疎地に突如強力なコンテンツが生まれた事例として話題となり、地方創生「高畠モデル」としても耳目を集めつつあるのだ。
2015年10月に開講し、2016年3月には第2期生の入学式も行われた。「熱中小学校」の名前の由来は、水谷豊主演のドラマ「熱中時代」でこの小学校がロケ地だったため。ドラマの水谷豊演じる新任教師ではないが、「熱中小学校」でも個性的な教師陣による多彩な授業が行われる。
同時に施設内でサテライトオフィスも運営し、3社の企業誘致に成功している。狙いはベンチャー企業の成長を街の活力にするとともに、未来の起業家育成につなげること。一方、時を同じくして「ふるさとテレワーク」の実証事業が動き出していた。両プロジェクトは目指す方向性が似ていたことから、高畠町も応募。独自に進めていた企業誘致から、さらに地元雇用の創出、移住・定住の可能性も見据え進められたのが、高畠町での取り組みである。
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