VIAが目指す車載マーケットは
輸送サービスやシェアリング
長い前置きになったが、以上の状況を念頭においていただいた上で、説明会の内容を解説しよう。説明会では、まず台湾からRichard Brown氏が来日し、同社の戦略を簡単に説明した。
昨今の産業界ではPCからインターネットを経てスマートフォンが中心になっているのはご存知のとおりで、これに続いてIoT(Internet of Things:モノのインターネット)が一昨年あたりから活発になっている。
この次に来るのが自動車だ! という話はもう珍しくない。ここに向かって半導体業界各社は、ECUやBody、HV/EV、ADAS、Infortainmentなどのコンポーネントでのシェアを取るべく奔走しているわけだが、こうしたマーケットに直接参入できるほどVIAの規模は大きくないし、その意思もない。
その代わりに同社はややおもしろい形での参入を考えている。それは、輸送サービスやシェアリングである。
個人の輸送サービス、というのはUberあるいはLyftなどのライドシェアを指しているが、こうしたトレンドが急速に起きはじめているのは広く知られている。
国内の例では、首都圏では車を保有する代わりにカーシェアやレンタカーを利用する動きが盛んであり、逆に地方では運転できなくなった高齢者のためにライドシェアなどの動きが出つつある。
自動車業界はそうしたことにむけて自動運転を推進しているが、VIAが狙うのは自動運転に至るまでの間のカーシェアやライドシェアに向けたシステム、といえばわかりやすいだろうか。
すでにVIAは公共交通機関向けのエンターテイメントやネットワーク接続に加え、トラックやレンタカーなどの運行管理システムを提供しており、今回の発表もこうした動きの延長にあるものである。
ではこうしたソリューションに対してのVIAの強みはどこにあるか? というと、元々SoC(System-on-a-chip)の製造を行なっていただけに、OSのカーネルのカスタマイズやドライバーの提供、その上のBSP(Board Support Package)の構築、ライブラリーやツールの提供などまで可能なことだ。
BSPというのは聞きなれない用語かもしれないが、開発用のリファレンスボード上でターゲットとなるLinuxやAndroidといったOSと、これを動かすために必要なドライバー、さらにツール類をまとめたソフトウェアパッケージのこと。Windowsで言えば、チップセットドライバーにビデオカード/サウンド/LANなどとBIOS、さらにユーティリティ類までセットにしたもの、というのが一番近いだろう。
これが、せいぜい対応できるのがBSPやツールの提供で、それ以上のカスタマイズになるとメーカー任せにならざるを得ない代理店との大きな違いである。
AMOS-825の場合、内部のSoCはNXP(旧Freescale)のi.MX6 QuadというARMベースのSoCであり(後述)、子会社のWonderMediaのSoCと違ってチップそのものは外部から購入している形である。
それにも関わらず、WonderMediaの場合と同等のカーネルのカスタマイズやドライバーのサポートが可能になっているのは、やはりSoCそのものの製造経験があり、現在もそれをサポートしている部隊がいるからに尽きる。今回はそのソリューションをJapanTaxiと共有するという形で、新たなパートナーシップを結んだことになる。
実はVIA Technologiesは、改めて日本での市場規模を広げたいと渇望している。特に2020年に向けて、いろいろ々な社会インフラを新設したり、拡充したりする動きが広がっている。
この中には、VIAの提供する製品群で十分まかなえるものも多く、こうした市場を取ることで日本での売り上げをさらに増やしたいという考えだ。それもあってか、Brown氏は「しばらくは日本に来ることもなかったが、今後はもっと足しげく来たい」と挨拶して自身の説明を締めくくった。