邪魔なのは「本社」という格差概念
テレワークで加速!会津若松で急成長する「データ分析産業」
2016年03月04日 06時00分更新
地方から人が減り続けている。日本の人口減少や東京への一極集中などが原因だ。このままだと2040年には、多くの地方自治体が行政機能を維持できなくなってしまうとされる。
そこで取り組まれたのが、総務省「ふるさとテレワーク」である。
都会のいつもの仕事をそのまま続けられるよう、地方にテレワーク環境を整備。地方への移住や企業進出を促進し「新たな人の流れ」を創る。さらに移住者が地方に溶け込めるよう支援することで、その流れを一過性のものではなく「定着・定住」につなげる。
その実現可能性を検証すべく、全国15地域で実証実験が行われ、約180社の協力会社から合計約1000人が実際に移住。テレワークの地域への影響、効果や課題を洗い出した。「ふるさとテレワーク」は地方を救うのか? そんな各地での取り組みをレポートする。
今回は福島県会津若松市。プロジェクトを主導する、アクセンチュア 福島イノベーションセンター長の中村彰二朗氏に聞く。
アクセンチュア流テレワークを横展開
磐梯山の麓に広がる会津若松市。福島県会津地方の中心都市で、江戸時代には会津藩の城下町として栄えた。幕末の戊辰戦争で数奇な運命を辿った鶴ケ城や白虎隊が有名で、ほかにも郷土料理の「こづゆ」、伝統工芸の「赤べこ」などにより、多くの観光客を集める。一方で、1995年頃から人口は減り続けている。
そんな同市で実施されたのは「マッチングシステムによる高付加価値業務のテレワーク化」というプロジェクトだ。都市圏の企業が、本社から「高付加価値業務」を切り出して、テレワークで行えるかを検証した。
アクセンチュアが社内で日常的に利用している「マッチングシステム」を使って、本社とテレワーカー間で最適な業務をマッチングするのがポイントだ。
このシステムでは、管理者が「業務量・内容」を登録し、参加者が「空いているスケジュール」と「経歴・スキルセット」をすべて登録しておくことで、例えば「この案件は医療の知識が必要なので、あの人に任せよう」とシステムが自動でマッチングしてくれるという。
これにより、アクセンチュアでは場所に関係なく仕事ができる。「本社」という概念もなくなるほどテレワークが浸透し、各プロジェクトの内容に応じて最適なスキルを持ったスタッフがその都度集められ、終わったら解散するような業務体制が整っているという。
まるで「人材のクラウド化」だ。中村氏は「この仕組みがあれば、テレワークは普通に普及する」と語る。とはいえ、国内企業で実現できているケースは少ないだろう。そこで、協力会社のブリスコラおよび日本エンタープライズにシステムを公開し、市内のサテライトオフィスでテレワークを実践したのが、会津若松市での取り組みだ。
テレワーク内容としては、経営戦略や研究開発など企業にとって核心的な「高付加価値業務」に焦点を当てた。具体的には何か――? アクセンチュアでは「データ分析」を想定している。その理由は「データ分析こそ、これからの地方を支える新産業になりうるからだ」(中村氏)
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