我が家のネコは、なぜか筆者の財布がお気に入り。テーブルに置いておいた財布が、いつの間にかどこかに行ってしまうことがよくあるのだが、決まってネコが寝床に持って行き抱えて寝ている。ただ、以前は結構慌てることもあったのだが、最近はあまり気にしなくなった。なぜなら、筆者はおサイフケータイをフル活用しているので、財布がなくてもそんなに問題がないからだ。
そんな折、とある検証に合わせて、ネコに財布をとられた場合を想定(!?)し、おサイフケータイだけで旅をしよう、という計画が持ち上がった。というわけで、この記事ではその旅行の顛末を紹介したいと思う。
NFC決済を試すために沼津港まで旅することに
今回、沼津まで旅に出ることになったのは、こちらの記事にもあるように、沼津港の「ぬまづみなと商店街協同組合」加盟店において、NFC非接触決済に対応した決済端末が2015年6月より順次設置されたということを受け、実際にApple PayやAndroid PayなどのNFC決済が利用できるかどうかを確かめたい、ということが主題だ。ま、ネコのことはあまり気にしないでほしい。
ただ、残念ながら筆者はApple Pay対応のiPhoneを所有しておらず、Apple Payは試せない。Android Payは、筆者が利用しているAndroidスマホ「Xperia Z5」でも利用可能な状態となっているが、Android Payに登録しているクレジットカードは、アメリカのスーパーなどで販売されている「ギフトカード」と呼ばれる種類のもので、北米以外での決済が行なえないという制限がある。今回の旅に同行した、先の記事を執筆したS氏は、Apple Pay、Android Payともに利用可能な状況だったため、実際に使えるかどうかはそちらで検証できるものの、筆者は単に旅に付いていくだけになってしまう。それではさすがにつまらない。というわけで、今回の沼津までの旅に、「スマホのおサイフケータイ機能を利用した非接触決済だけで旅をする」という縛りをつけることにしたのだ。
筆者は、周囲が認めるほどの「おサイフケータイジャンキー」で、とにかくどこまでおサイフケータイが便利に使えるのか、身をもって検証するのを常としている。筆者が使っているスマホには、「モバイルSuica」や「iD」、「楽天Edy」など、さまざまな非接触決済サービス(いわゆる電子マネー)を登録している。そして、電車に乗るのはもちろん、コンビニでの買い物、タクシーの支払い、食事の支払いなど、おサイフケータイで決済できるならば必ず使うようにしている。もはや、おサイフケータイがないと生活できない身体になっていると言っても過言ではない。
以前、ちょっと興味があって、普段どの程度現金を使っているのかチェックしてみたことがあるが、2週間で現金を使ったのはわずか3回しかなかった。その間、クレジットカードを使うこともあったので、すべての決済をおサイフケータイで済ませたわけではなかったが、それでも現金を使う機会は非常に少ないし、数日財布に触らず過ごすことも珍しくない。そういったこともあって、今回の沼津旅行に合わせ、おサイフケータイだけでどこまで快適な旅行ができるのか、試してみたかったのだ。
というわけで、1月下旬の某日、東京駅を起点として、おサイフケータイのみで沼津へ出発することになった。
ホテルは問題ないも、沼津までの道のりに大きな問題が
今回の沼津旅行は、当初から1泊2日の日程にしようと考えていた。となると、当然現地で宿泊する必要がある。というわけで、最初のハードルは「おサイフケータイで決済可能なホテルがあるかどうか」だ。
ただ、これについては全く心配していなかった。以前より非接触決済可能な店舗を調べる中で、非接触決済を導入しているホテルチェーンが存在しているとわかっていたからだ。問題は、沼津周辺にそのホテルがあるかどうかだが、調べてみると残念ながら沼津駅周辺にはなかったが、沼津の隣駅となる三島駅に存在することが判明。そのホテルは、三島駅前の「ホテル・アルファーワン三島」で、iDやWAONなど、各種電子マネーでの支払いが可能となっている。さすがに、ホテルは当日飛び込みだと不安なので、あらかじめ予約したが、支払いは現地で行うこととして予約。これで当日の宿の不安はなくなった。
次のハードルが、沼津までの道のりだ。通常の旅行であれば、三島駅まで東海道新幹線を使うところだ。東海道新幹線では、JR東海が提供している「エクスプレス予約サービス」に入会するとともに、決済クレジットカードに「エクスプレスカード」または「株式会社ビューカード発行のビューカード」を利用することを条件に、モバイルSuicaを使ったタッチで乗車するサービス「EX-ICサービス」を利用できるが、今回の旅の参加者は全員エクスプレス予約サービスに入会していない。加えて筆者は「エクスプレスカード」も「株式会社ビューカード発行のビューカード」も所有していない(筆者は、提携他社が発行するビューカードをモバイルSuicaで利用している)。そのため、モバイルSuicaを使って東海道新幹線に乗車できないので却下。
しかし、ここで大きな問題に直面。それは「交通系ICカードは基本的に異なるエリアをまたいで利用できない」というものだ。たとえば東海道本線では、東京駅から熱海駅の間がJR東日本の「Suica」利用可能エリア、函南駅から関ヶ原駅の間はJR東海の「TOICA」利用可能エリアとなっているが、Suicaエリアから交通系ICカードで乗車し、途中で精算することなくTOICAエリアに移動してタッチで下車、ということができないのだ。
これは、現在の交通系ICカードのシステムが、基本的に単一の利用可能エリア内で閉じたシステムとなっているためだ。仮に、エリアまたぎでの利用に対応させようとしたら、途方もない組み合わせを考慮した精算システムを盛り込む必要がある。相互直通運転を行っている列車がある関係上、首都圏のSuicaエリアとPASMOエリア、そして九州のSUGOCAエリアとはやかけんエリアの一部では、エリアまたぎでの利用に対応しているが、これを全国の交通系ICカード全エリアに広げるとなると、そう簡単には実現できないと思われる。
個人的には、SuicaエリアとTOICAエリアをまたいで相互直通運転を行なっている列車は結構存在しているのに、この区間をエリアまたぎで利用できないのは納得いかないのだが、そういうシステムになっている以上どうしようもない。
では、どうすればいいのか。東海道本線でSuicaエリアからTOICAエリアに移動する場合には、熱海駅で一度精算して改札外に出て、函南駅までのきっぷを買って函南駅まで移動、そしてまた函南駅からタッチで乗る必要がある。カードタイプの交通系ICカードを使っているなら、駅の券売機でカードを使ってきっぷを買えるが、券売機はモバイルSuicaのタッチできっぷを買えないため、この手段は使えない。
となると、熱海駅から函南駅まで、別の手段で移動する必要がある。まず最初に考えたのは徒歩だが、熱海駅から函南駅の間は営業キロで9.9キロメートル。試しにGoogleマップで徒歩移動の経路を調べてみたところ、移動距離が15.7km、移動時間3時間46分という、目の前が真っ暗になるような結果が表示された。もう少し温かい時期ならともかく、大雪に見舞われた直後の1月下旬ということもあり、当然そんなのは同行者の猛反対もあり却下。
次に考えた手段はバス。しかし、調べてみたところ、熱海駅から函南駅まで走るバスはなかった。その他、電子マネー対応のタクシーを使うとか、最悪電子マネー対応のレンタカーにするかとか、色々案は出てきたのだが「公共交通機関でタッチのみで移動できないと負けなんじゃないの?」という声がどこからともなく聞こえてきた。
まあ、そう言われると確かにその通りだよね、ということで、他の手段がないか色々と考えてみたところ、ひとつ妙案が浮かんできた。それは「箱根を経由する」という方法だ。