真空管なのに8種のサウンドを持つVOX「AV」シリーズ
マーシャルと並ぶブリティッシュギターアンプの雄であるVOXからは、8種類のチューブアンプの音をスイッチで切り替えられる「AV」シリーズが発表されています。と言っても、デジタルのモデリングではなく純然たる真空管アンプで、音色別に8種類のプリアンプ回路を積んでいるというから恐れいります。
VOXには「amPlug」というヘッドフォン用ギターアンプがあり、マーシャル、フェンダー、VOXと、それぞれのアンプサウンドを模したバリエーションを用意しています。私はてっきりモデリングだとばかり思っていたのですが、以前amPlugを開発したVOXチームに取材し、その場で分解してアナログ回路で組まれていることを見せてもらい、仰天した覚えがあります。そういう技術があれば、こんなアンプも企画できるのでしょう。
設定されている音色名は、CLEAN1、CLEAN2、CRUNCH1、CRUNCH2、OD1、OD2、H.GAIN1、H.GAIN2。想像してください。それぞれ代表的なアレとかアレとかアレです。そのほか、プリ管をブーストするBRIGHT、FAT、パワー管の動作点を変えるBIAS、パワーアンプの帰還量を変化させるREACTORという4つの設定スイッチがあり、音色のマニアックな変化が楽しめます。
シリーズバリエーションは、8インチスピーカーで15W出力の「AV15」、10インチ30Wの「AV30」、12インチ60Wの「AV60」の3つで、それぞれ最近のVOXの製品らしく、バスレフ構造のキャビネットで低域を稼いでいます。モジュレーション、ディレイ、リバーブといったエフェクターを内蔵し、AV30とAV60は、外部エフェクト用にセンド/リターン端子も持ちます。
各販売店が付けた価格は、AV15が2万4800円、AV30は3万7260円、AV60は4万8600円。コストパフォーマンス高いです。AV15は発売中で、AV30/60は2月下旬発売予定となっています。
以上、今回のNAMMショーでは、代表的なアンプメーカーが新しい方向性を打ち出してきました。マーシャルは自社の真空管サウンドをモデリング、BOSSはソリッドステートで真空管サウンドを実現、VOXは真空管の音は真空管で造ればいいじゃない、と。この三社三様のアプローチの違いが興味深いわけですが、いずれにしても真空管の音からは離れられない。
そこで、いま気になるのは、新型真空管「Nutube」を使ったギターアンプです。これもNAMMショーに新しい試作品が出ていました。それはまた次の機会に。