グーグル相手に根性見せた
Android Wearにも、消費電力をおさえる「アンビエントモード」はある。だが、アンビエントモードには秒数の表示がない。1分間に1回更新するだけだ。
腕時計のベースは時刻だ。時を刻むなら秒まで刻めというポリシーがカシオにはあった。アンビエントモードにない部分として2層液晶を使うことで、しっかり秒数まで表示するような仕組みを持たせたい。
Android Wearにある「シアターモード」という表示部を真っ暗にする仕組みを応用する方法を考えた。仕様をまとめ、グーグル側との交渉にのぞんだ。
「ただスマートウォッチをつくるのではなく、伝統と先進を融合させたい。そう伝えたんです。もちろん先進的な部分もあるんですが、時計としてのいい部分を残した中、防水性能・耐久性能・操作性をポリシーとして開発をしたいんだと」
最初は資料だけで説明したが、グーグルにはうまく伝わらなかった。カシオをただの腕時計メーカーと勘違いしたのか「無理しないでいいよ」とさえ言われた。しかしいざ試作機を持ちこんでみると、意外な反応がかえってきた。
「グーグルさんから『こういうとき使えるよね!』と逆提案がもらえたんです。なんとなく、言わなくてもわかってもらえたという感覚さえあった。もしかしたら弊社のウォッチファンがいたのかも……なんて思っています」
そのあとも「腕時計らしさ」にはこだわった。3つのボタンをつけたのも、もちろん腕時計としての操作性を意識したためだ。
「ボタンを押せば、すぐ情報が表示される。タッチパネルもついているのでアプリの操作もできますが、それより直感的に、素早く確認したいはずです」
どのボタンに何の機能をわりあてるかはカスタマイズできる。ボタンを押せば地図を表示する、天気を表示する……といった具合だ。アウトドアのシーンや状況によっては「ボタン一発」のほうがいいはずだと考えた。
苦労の末、完成したのが「Smart Outdoor Watch WSD-F10」。カシオらしさがつまったスマートウォッチができたと、ついに発売を決めた。ようやくできあがった製品を前に、坂田室長にあらためて聞いた。スマートウォッチとは何なのか。