一部のメディアの報道では、昨今、若年層の腕時計離れは凄まじいらしい。これは一人一台のスマホの普及が最大要因のように解釈されているが本当にそうだろうか?
腕時計を現在時刻を理解したり、今後のスケジュールを考える基本材料にだけ使うならそうかもしれないが、どうもそれだけではなさそうだ。
やはり一番の理由は、スマホなどの普及をきっかけとして腕時計市場全体が縮小したこと。その結果、商品の提供者側が十分な利益の確保できる高級腕時計志向に偏ったこと。
そのことから、安価な商品のバリエーションが減り、安価な腕時計に魅力的な商品が少なくなったことが原因ではないだろうか。
しかし、海外からの輸入品が大半の国内高級腕時計市場では、中国本土からの“ホンモノ爆買い顧客”の影響を受け、ますます高級志向となり、ブランド腕時計の価格は急激に高騰し、ごく普通の消費者のまったく手の届かないセレブ世界の商品になってしまった。
国内市場で積極的に腕時計をもう一度販売拡大しようとする、ごく一部のベンチャー的腕時計提供会社以外は、国内市場は中国市場向け商品のサブマーケットと考えているのかもしれないし、すでに国内腕時計市場に興味を失っているのかもしれない。
優秀な技術と伝統があり、過去には膨大なマーケットのあった日本国内市場だけに残念だ。
筆者は、爆買いセレブ市場向けの100万円以上の高級腕時計と“コスパ命”の若年層にターゲットを絞った昨今人気の2万円前後の安価な腕時計を除いた、価格帯に本来の腕時計らしい価値ある商品が存在すると考えている。
中でも10~35万円クラスの腕時計には極めて優秀で一生持つにふさわしい国際的にも価値のある腕時計がいくつか存在している。
そんなバリューウォッチの中でも今回、筆者はドイツ腕時計の真髄とも言えるユンハンス(Junghans)の「クロノスコープ」を衝動買いしてしまった。衝動買いとは言え、実は7年ほど前に欲しいと思いはじめた製品だ。
ついに購入した「Max Bill By Junghans Chronoscope」
その気持がより固まったのは、実は一昨年の末に都内で行なわれた「マックス・ビルの会」でデザイナーの向井周太郎さんに久しぶりにお目にかかった時だった。
向井周太郎さんは、ウルム造形大学にてマックス・ビルに学ばれ、その日は腕にマックス・ビルのデザインした極めてシンプルな腕時計をされていたのだった。
バウハウスの理念でもある「機能主義的造形」を具現化したマックス・ビルの腕時計は、多くの腕時計メーカーから多くの商品が提供されている腕時計の中にあっても、極めて明確な違いを感じることができる古くて新しい腕時計だ。
そして、その後1年ほどは、腕時計屋さんを訪問すれば必ずユンハンスのコーナーを見ていた。
そんな筆者が7年かけて衝動買いしたユンハンスのマックス・ビル デザインの腕時計(品番:027 4500 45)は、自動巻きでシンプルながらクロノグラフ機能を搭載した「クロノスコープ」のブラックモデルでミラネーゼブレスレットの商品だ。
マックス・ビル デザインの腕時計はもっともシンプルな3針腕時計からクロノグラフまで、機能と文字盤、マーカーインデックスのデザインやブレスレットの色や素材の違いで全部で約50種類ほどのモデルが存在する。
国内でも流通をシンプルにすることで低価格を実現したKnot腕時計も機能最優先で、それを極めてシンプルなデザインで補強している流行のミニマルプロダクトだ。

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