ブロケード コミュニケーションズ システムズ(以下、ブロケード)は1月21日、モバイルネットワーク分野に参入すると発表した。本格的にソリューション展開を開始するにあたり、米ブロケード幹部が技術戦略を説明した。
ブロケードは、クラウド・モバイル・ソーシャル・ビッグデータなどの「第3のプラットフォーム」で求められる新しいネットワーク要求に対応できる「New IPアーキテクチャ」を提唱している。それはSDN/NFVなどでネットワークのハードとソフト、あるいはデータプレーンとコントロールプレーンを切り離して、圧倒的な柔軟性を実現するものだ。
これまではデータセンターのネットワークを主戦場として、そうした取り組みを進めてきた同社だが、今後はモバイルネットワークにも積極的に投資を行っていくという。
ブロケード 代表取締役社長の青葉雅和氏が背景として語ったのは、「政府の携帯料金引き下げ推進」「拡大するMVNO市場」「2020年に向けて加速するIoT・M2M」など。これらにより、モバイルネットワークにより大きなスポットが当たるとする。これらは基本的に国内背景であるが、世界的に見れば、現在進行中の大きなトレンドとして「5G」がある。そうした激動に対して、これまで同社がデータセンター市場で培ってきたネットワークの技術をモバイルネットワークの領域にも拡大するというのが、今回のメッセージだ。
実際ブロケードは、2014年9月にモバイルネットワーク事業者向けに分析機能を提供するVistapointe社を買収、2015年3月にvEPC(virtual Evolved Packet Core)技術を提供するConnectem社を買収した。
ConnectemのvEPCソリューションは「Brocade Virtual Core for Mobile(VCM)」として、すでにブロケードのソフトおよびはハード製品群と完全に統合され、New IPのデータセンター・インフラを構築する中核製品となっている。
そのほか、2015年10月には、次世代モバイル・ブロードバンド・インフラ向けの標準策定を目的に、世界のネットワーク事業者によって設立されたオープンフォーラム「Next Generation Mobile Networks(NGMN) Alliance」に加入するなど、同分野への投資を加速させている。
この流れを今後も強めていく方針で、米ブロケード CTO兼コーポレート・デベロプメントおよびエマージング・ビジネス担当シニア・バイスプレジデントのケン・チェン氏は、「ブロケードはこれまで、FC SANやFabricなどのコアビジネスと、SDN/NFVの成長過程のビジネスに投資し、それぞれの分野でリーダーとなった。昨今はビッグデータ分析、機械学習を利用したセキュリティ、モビリティなどの新しいビジネスにも注力を始めている。そのうちのモビリティが今回のテーマで、SDN、NFV、vEPC、MEC(モバイル・エッジ・コンピューティング)、ファブリック、ルーティングにおける知見を基に、モバイルの技術革新を図っていく」を意気込みを表明。
また、モバイル・ネットワーキング担当CTOのケビン・シャッツケーマー氏が「モバイル、動画、IoTなどの普及により、ネットワーク上には様々なデータが流れるようになり、これまでサービスプロバイダが築いてきた設備が実情になじまなくなっている。その課題を5Gが解決すると大きな期待がかかっている。ただ、実際に利用するのは2020年まで待たなければならず、すでに多くの課題を抱えるモバイル・サービスプロバイダからは待ちきれないという声が挙がり、“技術の空白”が生まれてしまっている。我々はそのギャップを埋めるために、これから多数のソリューションを提供していく予定だ」と今後の方針を述べた。
実際には、これまでデータセンター領域で培ってきたネットワーク技術と、モバイルネットワーク分野の新ソリューションにより、モバイル・サービスプロバイダーに「コスト低減とサービス投入時間の短縮」「新しいワークロードやネットワーク要求に対応するインフラのスケーラビリティ」「ユーザーごとにパーソナライズされたサービスを可能にするネットワークインフラ」といった価値を提供していく考えだ。
具体的な新製品とソリューション、およびパートナーシップについては、2016年2月に開催予定のMobile World Congress 2016で明らかにする予定としている。