皆様、新年おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
スーパーコンピューターの系譜は少し休憩させていただいて、その間に主要な製品ロードマップのアップデートをお届けする。今回はインテルのCPU編である。前回は8月だったので4ヵ月ぶりになるが、実はあまり情報そのものは変わっていない。
Skylakeは動作周波数を上げるために
パイプライン段数を増やした可能性アリ
まずはCore i7 Extremeからになるが、これに先立って少しSkylakeコアの話をしたい。前回、HaswellとBroadwellコアを比較した上で、現在のインテルの14nmプロセス、つまりP1272はSoC向けで、動作周波数が低いところでの消費電力は下がるが、その反面高速動作をさせにくい(急激に消費電力があがる)という話をした。
この際に、高速動作向けのP1273が登場すれば動作周波数が上げられるだろう、と予測をしたのだが、これが間違いであった。
なにが間違いかというと、このP1273にあたる「High Speed Logic向け14nmプロセス」は、どうも2015年の比較的早い時期に開発が放棄された模様だ。つまり14nmを利用する製品はすべて、現在のP1272でなんとかしないといけない。
そしてSkylakeではなんとかなってしまった。実際のところ、例えば「Core i7-6700K」なら定格で4GHz、ターボブーストでは4.2GHzまで引き上げられる。
なぜこれが可能になったかというと、諸々考えた結果としての筆者の結論は「CPUパイプラインに手を入れた」である。要するにパイプライン段数を少し増やし、パイプラインの中でクリティカルだった部分を緩和したことで、動作周波数を引き上げられたとみている。
古いところではPentium IIIが180nmプロセスで1.13GHzそこそこだったのが、Pentium 4で2GHzまで引き上げできたというアレである。
もちろんPentium 4のようにダイナミックに段数を増やしたわけではないため、動作周波数の上がり方も緩やかであるが、それでも「Core i7-5775C」が定格3.3GHz、ターボブーストで3.7GHzどまりだったから、それなりに性能の底上げに貢献したことになる。
もっともその代償は、消費電力の増加である。下のグラフは、現在発表されているすべてのHaswell/Broadwell/Skylakeのコアについて、横軸を定格動作周波数、縦軸にはTDPをコア数で割ってプロットしたものだ。
離散的になっていてわかりにくいのだが、近似曲線を見ていただくと、BroadwellとHaswellは非常に似た傾向で、ただしBroadwellの方がTDPが低くなっている。問題はSkylakeで、2.5GHzあたりからBroadwellを超えて消費電力が増え、4.7~4.8GHzあたりでHaswellとも交錯しそうな勢いである。
なぜBroadwellとSkylakeが同じ14nmプロセスなのに、これだけカーブが違うかといえば、もちろん細かく改良はあるのだが、基本的なところはパイプライン段数が増えたことによる消費電力増加がその理由と思われる。
Core i7 Extremeの最上位は
10コアの「Core i7-6950X」
話をCore i7 Extremeに戻そう。実は一時期、Broadwell-EのベースになるXeon E5向けのBroadwell-EPや、Xeon E7向けのBroadwell-EXをキャンセルしてSkylakeに移行するという計画が持ち上がっていた。
ところが最終的にこれはなくなり、きちんとBroadwell-EP/EXを挟むことになり、Skylake-EP/EXは2017年度に持ち越しになった。
理由は比較的簡単で、動作周波数そのものを3.5GHz以上にしたいのであれば、BroadwellベースよりSkylakeの方が有利である。ところが3.5GHz以下がメインになる場合、Broadwellベースの方が消費電力が少なく、しかもCPUコアのエリアサイズも微妙に小さいために有利となる。
昨今のXeonの場合、動作周波数を引き上げた製品よりも、コア数を増やした製品の方が売れ行きが良い状態であり、この観点で言えばSkylakeベースよりもBroadwellベースの方が製品として良いことになる。
Skylake世代では別の付加価値をつける形で差別化が図られる予定であるが、このようなことから、Broadwell-Eが再び復活することになった。
ただし投入時期は当初予定されていた2016年第1四半期からややずれて、2016年の6月になりそうである。
トップエンドは10コアの「Core i7-6950X」となる模様。動作周波数は3GHzとやや控えめである。10コア20スレッドを誰が使うんだ? という気もするが、世の中には24コア48スレッドのマシンを自腹で構築した逸般人もいるので、それなりに需要はあるのかもしれない。
この6950Xのほかに、6/8コア構成の6800K/6850K/6900Kも予定されている。スペックは下記のとおり。
CPUのスペック表 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
製品名 | コア数 | 動作周波数 | 3次キャッシュ | |||
Core i7-6800K | 6 | 3.4/3.6GHz | 15MB | |||
Core i7-6850K | 6 | 3.6/3.8GHz | 15MB | |||
Core i7-6900K | 8 | 3.2/3.7GHz | 20MB |
→次のページヘ続く (Kabylakeは2016年8月末に投入)
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ