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『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画 第13回

角川歴彦会長が語る『角川インターネット講座』

ジョブズ亡きあと、インターネットはどこへ向かうのか 角川歴彦会長

2015年12月30日 18時00分更新

文● 盛田諒 写真●曽根田元 編集●村山剛史/ASCII.jp

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グーグルは「インデックス」なしでは生まれなかった

── 1960年代後半に30代だった角川会長ですが、ビジネスの目線で当時と現在を比べてみるとどう見えますか。

角川 新しいビジネスがいくらでもできるよね、次から次へと。ぼくらの時代はそれぞれの業界でトップが頂点に君臨していて難しかったんだよ。ヒエラルキーが確立していたから。トップ企業への挑戦はヒエラルキーそのものに対しての挑戦だった。それ自体が高い山であり、強固な産業秩序が機能していた。そこに今日でいうイノベーションといわれる破壊と創造が起った。

 当時はヒエラルキーがあると、トップにいることで得られる収益だけではなく、ヒエラルキーの一部であることで収益を得られた。それが産業界のふしぎなところだ。問題は収益を享受するのがトップだけじゃないこと。いちばん悪いのは準トップだよ。

 2番手がトップ企業をまねて、ヒエラルキーをつくってきた。体制を壊されたら困るから、下からヒエラルキーを破壊しようとするような、順位を変えようとするようなことは困るというわけだ。

 そのなかで順位を上げていく行為は、イノベーションよりはるかに難しかった。歓迎する雰囲気がまったくなかったからね。

 イノベーションはつねに業界外の人間からもたらされる。内部で束縛されないところから生まれてくるでしょ。イノベーションは外部から起きるもの。イノベーションはレボリューション(革命)につながる言葉だけど、内部から改善・改革を怠ると、外の人が革命を起こす。そういう革命、イノベーションは常に体制のないところから生まれてくるものだから、逆に言うとベンチャーはラクなんだよね。

 手前みそだけど、ぼくが出版の革命を起こした1つはテレビ番組を書籍にする行為だったと思う。

 当時はテレビが出現したことで映画も出版も衰退すると言われた時代だったんだよ。インターネットの出現に通ずるものがある。コロンブスの卵だったんだね。だけどNHKの歴史シリーズ『日本史探訪』の全集などという企画、つまりテレビ番組を本にするというのはそれこそ抵抗があった。ぼくなんかも当時は社内でさんざんバッシングを受けたからね。

 けど、結果的には、テレビ番組の出現によって本が売れるんだということがわかった。ただ、それは1冊目だけがイノベーターで、あとはまねっこ。インターネットから『電車男』が生まれたときも同じ。あの一冊だけが革命だった。

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── いまはIT企業がヒエラルキーの外側からあらわれて、イノベーションを起こしている。角川書店(当時)も、外側のメディアをとりこむという形で、出版業界の中でイノベーションを起こしてきたのだと。

角川 くりかえしだよね。(テレビの次は)インターネットをとりこみ、相乗効果を出していく。ただ、忘れちゃいけないのはメディアの持つ根源的性質だよ。

 メディアは技術によって生まれてくるものだから。グーテンベルクの印刷技術が発明されたからこそ、本が生まれ、新聞が生まれてきた。そのあとに20世紀になってラジオが発明され、映画が発明されて、テレビが、ゲームが発明された。

 発明がメディアを生むけど、古いメディアほど時間をかけて熟成していく。生まれたのが現代に近くなるほど賞味期限が短いんだ。それは宿命のようなものでね。本の賞味期限は急速には終わらないんだよ。

 グーテンベルク印刷技術の何がすごいか。巻物がグーテンベルクによって冊子になったことでページ検索やインデックスという概念が生まれた。印刷物を作ったことだけが偉大なんじゃない。

 グーグルなんて「インデックス」がなければ生まれてこなかったわけだよ。コデックスからインデックスへ、いろんな発明が次の発明を生んでいくわけ。

 本というのは目次という機能、ページ・索引という機能を準備していたんだよ。もとをたどればグーグルの出現というのも必然だった。グーグル検索を発明したラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンはすごい発明家だったけれども、宿命的に図書館で働いていた青年が考えついたものなんだよ。

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(次ページでは、「自らをメディアと規定したアップルとシラを切ったヤフー、グーグルの差」)

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