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IoT-Engineで身近な家電をインターネット化

「TRONはIoTのための部品」坂村健氏

2015年12月08日 09時00分更新

文● アスキー編集部

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 「2O15 TRON Symposium - TRONSHOW -」が12月9日から11日まで、東京ミッドタウンで開催される。43の組織(27社16団体)が出展。組み込み技術やIoT、ユビキタス・コンピューティング関連の展示がある。入場料は1000円だが、事前登録しておくと無料になる。

 開催に先立つ12月7日には、トロンプロジェクトのリーダーで、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の所長を務める、坂村健東京大学教授が記者に対してTRONSHOWの見どころを紹介した。

IoT-Engineを掲げる坂村氏

 その中でも非常に興味深かったのは“IoT-Engine”(名称はIoTとT-Engineを組み合わせたもの)と名付けたモジュール。IoT機器用の標準プラットフォームと銘打っている。

 ARM系プロセッサーにリアルタイムOSの「μT-kernel 2.0」、Wi-Fiの1/10以下の消費電力をうたうWPAN(IEEE 802.15.4)対応の無線モジュール(2.4GHz帯のほか、国内で許可が下りたばかりの920MHz帯に対応)、センサーなどを接続するための100ピンコネクターなどを搭載する。

 6LoWPANプロトコルを使用して、ボーダールーターと呼ばれる機器を経由し、クラウドに接続できる。100ピンコネクターは、0.4㎜ピッチでArduino互換のI/O信号ピン割り当てを持ち、さらに標準化するため、センサー類を低コストで接続できるという。

 家庭内に置かれた家電機器などに組み込めば、簡単にエアコンや冷蔵庫、セキュリティー機器をインターネット上のクラウドに直結できる。また、太陽電池でも動く低消費電力をうたっている。

IoT-Engine

ボーダールーターと呼ばれる機器を経由し、クラウドに接続できる

無線通信部分は別基板として、様々な規格に対応できるようにしている。

 また応用例の一つとして“IoT-Engine”を採用し、自動運転に必要な各種センサーも搭載した電動自動車も用意。クラウドと連携してモーターやステアリングなどを駆動させられる。教育用途を想定しており、「IoT向けのプログラムを書ける人が少ない」という問題にも取り組んでいく。坂村教授によると「本体に搭載しているセンサーは自動車メーカーの自動運転車と基本的に同じで、サイズは1/10にとどめている。実際に人を乗せた自動車では危険も伴うが、これであれば自由に試すことができる」とした。

T-Car。教育用のキット

IoT-Engineを搭載

衝突などを検知するフロントカメラに加えて、路面のマーカーなどを読み込むためのセンサーなども設けている。

 また自動運転に関しては、完全な自律型ではなく、道路や信号機などにもマーカーを入れてクラウドと連携させながら実現したほうが効率的という見解も示した。

 2016年にはこの“T-Car”を利用したプログラミングコンテストも実施する予定で、東京だけでなくマレーシアにもサーキットを作り、障害をよけながら安全にゴールをたどり着けるかどうかを競わせたいとした。

 合わせて、ucodeBLEマーカーと言われる、Bluetooth対応のucodeタグ試作品も紹介。ユーシーテクノロジーの「ココシルマーカー(U00B0191)」「ココシルマーカー(U00M0037)」、そして富士通の「バッテリーレス・フレキシブルビーコン(CA99604-2161)」の3種類で、特に富士通の試作品は「ソフトリネンタグ」という柔軟で軽量なものとなっている。

バッテリーレス・フレキシブルビーコン

富士通が今後の取り組みとして示したタグ。体に直接つけて心拍数などの情報を発信する

 一般的な硬い基板の上にエッチングとハンダで回路を作るモジュールとは異なり、シリコン製のゴムシート上に導電性インクで回路パターンを描き、電気部品も導電性接着剤で接続する。手で曲げられるほど柔軟でIPX5相当の防水性能を備えるほか、軽量なため落下しても事故が生じにくく、電源も太陽電池でまかなえる。

 坂村氏は「(Bluetoothを利用したタグとしては)アップルのiBeaconが話題を集めているが、広く普及するかどうかは疑問。理由はアップルの規格で閉じているから。一方でわれわれは常にオープン。クローズとオープンの戦いでは結局、オープンが勝つのではないか」とコメントした。

青森県りんごトレーサビリティの取り組みも紹介した。これはucodeQRと呼ばれるタグ付きのラベルをりんごひとつひとつに付けて、生産者や栽培履歴の情報などをスマホで簡単に参照できるようにして、安全性を示す取り組み。

 ほかにも公共交通オープンデータ協議会と連携したYRPユビキタス研究所の取り組みとして、オープンなデータとしてクラウド上で共有した交通機関の情報(時刻表や運行情報)をリアルタイムに活用し、鉄道・バス・タクシー会社など、企業の枠を超えた替輸送手段の案内などを提供する実証実験について紹介した。

 スマホ上で確認できる、リアルタイム運行情報サービスの「ドコシル」と、駅に置かれたサイネージ上で提供する、スマートターミナルサービスの「ココシルターミナル」で、2020年の東京五輪を視野に入れ、機械翻訳を活用した多言語情報の提供などにも取り組んでいく。

 すでにJR東日本のスマホアプリや東京駅と武蔵小金井駅に置かれたサイネージなどで情報を参照することが可能。実証実験の成果を踏まえて事業化にも取り組んでいくとのこと。

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