Pepperとは、ソフトバンクロボティクスのパーソナルロボットのこと。日本の生産年齢人口は1995年の約8700万人がピークで、2014年には8000万人を割り込んだ。しかし、1984年に1億2000万人に達した総人口は、2025年ころまでは大きく減らない。食いぶちは減らないのに働き手が減ってしまうのだ。子どもは働かせられないから、このギャップを埋める方法は、男性がもっと働く、女性が働きやすい社会にする、正式に移民を受け入れる、働けるうちはずっと働く、ロボットにできることはロボットに任せる、の5つしかない。
もちろん、どれにもデメリットがある。長く働いた分給料が増えるか、子どもを産んで育てやすい社会を実現できるか、異文化と平和に共存できるか、若者が非正規雇用のままにならないか、かえって人間の仕事が減らないか。しっかり議論すべきだが、日本人は政治や社会の問題を語りたがらない。もっとも可能性があるのは、副作用を議論せずに済み、企業単位で導入を決めれば個別の問題を解決できるロボットだ。店舗やホテルの受付、警備や工場など、ロボットはジワジワ受け入れられるに違いない。
「Pepperは人型監視カメラ」と言ったらギョッとされた。「そんな本当のことは言わないで」ではなく、「かわいいPepperになんてひどいことを言うのだろう」のほうだ。たとえば、スーパーに買い物に行って、店員がいきなり録画を始めたり、マイクで客の会話を録音したりすれば、誰もが「いったい何に使うの?」と疑問に思うはずだ。しかし、顔のある人型ロボットに話しかけられれば、人間はロボットの目(カメラ)を見てしまう。Pepperのような人型ロボットの内蔵カメラやマイクが集めた情報をどう使うのか、どこに保存し、誰が所有権を持つのか考えるべきなのだ。
ロボットは、客がいつ店内に入り、どの商品を手に取り、何に視線を向け、最終的に何を買ったのかをデータ化する。「何かお困りですか?」と話しかけ、家族構成や収入をそれとなく聞き出し、Tカードをお持ちですかとは尋ねず、顔認証で来店頻度と購入履歴を検索し、割引クーポンをくれる。Googleアナリティクスでユーザーの動きを理解できるように、現実世界をWebのように分析できるのだ。
便利だが気持ちの悪い未来だ。だが、Webやアプリの世界では、ユーザーの興味・関心はAmazon、Facebook、Googleといった巨大ネット企業に筒抜けだ。ヤフーのサービス無料化や、リクルートのAirレジがクレジット手数料以外は無料なのは、真の目的がデータの収集だからだろう。現実世界までネット企業に侵食されるのを阻止しようと考えても、もう流れは止められない。もし問題があると感じるなら、ゲームのルールを作る側に回るしかない。WebマーケターやWebディレクターなど、いまWebで活躍する人こそ、ロボットで何ができるのか、真剣に考えるべきだ。「発明は未来予想の最善策(The best way to predict the future is to invent it.)」なのだから。
XPD SPIN-OFF EVENT「Designing Experience Strategy」
‐ Pepper開発現場にみる、理想のユーザ体験を創るデザインプロセス -
- 日時
- 2015年12月15日(火):14:30-18:30(開場14:15)
- 主催
- 株式会社ロフトワーク
- 会場
- ヒルサイドプラザ
東京都渋谷区猿楽町29代官山ヒルサイドテラス内 - 参加費
- 5,000円
- 対象
- 企業で顧客体験向上ミッションを担当している人
- 事業責任者、R&D、商品企画・開発担当者、マーケティング担当者など
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