ソフトウェア開発に専念し大きく進歩
しかしハードウェアは製造されず
さて、このプロジェクトはどうなったか? という話を最後にしておく。結論から言うと、部分的にノードのプロトタイプやInter-Cluster Crossbarなどは試作されたが、フルスペックのハードウェアはついに製造されなかった。
これはプロジェクトの出資者であるESPRITが、フルスペックのハードウェア製造の資金供出を認めなかったためだ。1991年にプロジェクト名は“GENESIS /S”になり、ここで超並列向けのソフトウェア開発に専念するという方針に切り替わった。
このGENESIS /Sの下にはWP1~WP5の5つのワークプレスが構成され、以下のような作業を行なっている。
WP1 | High Performance Parallel Application Software Basic Libraries、Parallel Ellpack、CFD Packages、Structural Mechanics、Device Simulation、Weather and Environmental Applications、Chemistryなど、共通のソフトウェア+特定分野向けソフトウェアの開発が行なわれた。 |
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WP2 | Tools for Parallel High Performance Systems Portable Diagnostic and Performance Analysis Tool Set、Simulator or GENESIS Programming Model、Application Software Migration Tool、Interactive Parallelizer (SUPERB)、Benchmark and Performance Modelling Toolsなど、システムやソフトウェアなどを動かしたり診断するためのツール類の整備と、移植性/標準化作業が行なわれた。 |
WP3 | Programming and Execution Environment Fortran for Distribution Memory Architectures、ANL/GMD Portability Macro Library、User Interface and Frontend Environmentなど、超並列環境におけるソフトウェア開発に必要なものの整備が行なわれた。 |
WP4 | GENESIS-P Testbed Implementation Implementation of Innovative Interconnect System、Integration of Prototype System and Software Environment of Application Libraries and Packages。これは実機がないので、その代わりとなるテストプラットフォームの構築が行なわれた。 |
WP5 | プロジェクト・マネジメントといった作業を行なっている。 |
実はGENESISからGENESIS /Sにプロジェクトが変わった段階で参加しているメンバー企業が多少変化しているのだが、GENESIS /Sで加わった企業の1つにMeiko Scientificがある。
彼らがCS-2をあっさり構築できた理由の1つは、GENESIS /Sへの参加でいろいろな知見を蓄えていた部分がかなりあったらしい。
特にMeikoのElan-Elite Interconnectに関しては、まさにこのGENESIS /Sへの参加(彼らはWP4に参加していた)によるところが大きいとされる。
実機が製造されないという意味では失敗という言い方もできるが、それ以上に超並列に必要とされるソフトウェアの開発に大きな進歩があったため、一般にはGENESISプロジェクトは成功とみなされている。
個人的には、とりあえずVersion 2はきっとひどいことになったであろう、という予感がひしひしとするだけに、あえてハードウェアを構築しないまま終わったというGENESISプロジェクトのあり方は、これはこれでアリなのではないかと思う。
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