スマートコンストラクションの全容
では、その全容はどのようなものだろうか。
まず「現況の高精度測量」。現況測量する際、これまでも3Dスキャナが使われている。3Dスキャナは12.7mmという細かいピッチで測量でき、人手の測量とは比べ物にならない精度をもたらした。さらなる高効率化のため、スマートコンストラクションでは「ドローン」で測量する。
自動設定された飛行経路を辿って、ドローンが空から現場を撮影。同じ被写体を違う角度から複数枚撮影することで位置関係や距離が算出され、合成することで「点群」で表現された3Dデータが作成される。その際、樹木や建物などの不要物を自動で除去する画像処理技術も備えている。
一方、各種設計情報から3Dモデル化した完成図面と比べることで、「施工面積」と「切盛土量」をグラフィカルに可視化できる。そのデータはクラウドサービス「KomConnect」に保存され、スマホなどからいつでもどこでも確認できる。
算出された「切盛土量」からは「施工計画シミュレータ」による計画立案が可能。土量を基に施工スケジュールを自動で作成できる。工期やコストを比較しながら複数のスケジュールを参照・カスタマイズし、工種ごとの工程表(ガントチャート)も自動で作成、レンタル機器も最適なタイミングで手配される。
こうして作成された施工データは、KomConnectからICT建機に自動ダウンロードされるため、設定に時間を費やすことなく、情報化施工が始められる。
日々の作業実績(どれだけ切盛・整地したか)もリアルタイムにクラウドに蓄積される。ただ、これまではコマツ製ICT建機の作業実績しかデータ化できなかった。現場にはほかにも、他社製の建機や人が掘った場所が存在し、そのすべてをデータ化できなければ「施工全体の見える化」とはいえない。そこで説明会当日には「ステレオカメラ」という新機能も発表している。
ICT建機に装着されたステレオカメラが周辺(作業状況)を撮影。そのデータはすぐさまクラウドに取り込まれ、3Dデータ化される。これにより、コマツのICT建機以外の作業実績も常にデータ化することが可能となり、全体を俯瞰しながら常に施工スケジュールの見直しが可能になる。コマツによれば「世界初の技術」だ。
もしも現場で設計変更があった場合、後方支援するサポートセンターも用意される。設計図面をオペレーターが修正・変更し、最新データとしてICT建機に送信。施工の手を止めずに済む。また、地質や埋設物といった施工の「変動要因」を調査・解析し、施工スケジュールに反映する技術も現在開発中だ。
サポートセンターではこのほか、ICT建機の操作案内や不具合などの設定変更も、リモートサポートツールなどを使って行うという。
若手現場監督も施工計画が容易に
ICT建機は、経験が不足していたとしても現場作業を可能にする。さらにスマートコンストラクションは、現場の監督や施工計画という仕事も大きく変える可能性を秘める。
これまで人の手で何度もやり直しながら、それでも正確にはつかみきれなかった現況把握。実際のところ「ベテラン監督も現状把握は勘に頼ることも多く、経験によって微調整しながら施工している」という。
その現況把握がドローンによって1日で行えるようになる。さらに算出された切盛土量から施工スケジュールや工程表を自動作成してくれる。若手の現場監督も膨大な設計資料とにらめっこしながら、何日もかけて施工計画を立案する手間がなくなるわけだ。
これまで経験と勘が絶対条件だった施工が、若手にも手の届く作業に早変わりするのだ。
コマツではスマートコンストラクションの狙いを「現場の生産性を向上し、ひいては日本の建設業の労働力不足を解消する」としている。今回、スマートコントラクションの説明、デモ、および動画を観て、それが夢物語ではないことが実感できた。
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