いまから30年くらい前に独ブラウンの電卓「ET55」に憧れ、ディーターラムズの創った機能美を気に入ってしまった筆者は、その後も何かの縁で出会った気に入った電卓はメーカーを問わずかなりの数を衝動買いしてきた。
しかし結局、手元に残ったのはブラウンの電卓が数台と英シンクレアの小型電卓が1台、同居人が家計管理に特別の思い入れもなく長く使っているキヤノンの電卓のみ。それが筆者宅の電卓のすべてだ。
ウェブ上の新製品ニュース(関連記事)で、カシオが「プレミアム電卓 S100」を発売することを知った筆者は、その日の内に予約し、発売日にゲットした。
商品の差別化の難しい昨今のICT(通信情報)業界は、なんたらアニバーサリーやプレミアム商品としての製品発表が多いが、S100もよくあるプレミアム商品らしく真っ黒のハードボックスに収まって出荷されてきた。
S100を箱から取り出した時の第一印象は“ずっしり”したその質量だった。すぐに自宅のキッチン秤で計測したところ、なんと実測で241gもあった。
これは歴史的なグッドデザイン電卓の1つでもあるブラウンの「ET66」の4倍近い重さだ。また表面積でS100の1.5倍以上もある思われるキヤノンの電卓「WS-1200H」よりも重い。
当然のことながら、電卓の許容重量はその電卓をどこで使うかで大きく判断基準の分かれるものだ。常時モバイル環境で使うなら明らかに重さは敵だが、自宅やオフィスなどの屋内だけで使用するなら、構造にもよるが逆に大きくて重い電卓が安定した入力操作の援助にもなるだろう。
アルミ製ボディーに硬めのスライドスイッチ
高級感あふれる外観デザイン
S100は一見したところ12桁のごく普通の電卓に見えるが、“プレミアム電卓”と言うだけあって構成要素も贅沢なスペックだ。
本体は切削アルミ製でブラック塗装、表面は極めて見事なヘアライン仕上げだ。マットなヘアライン仕様の美しいアルミニウム表面から飛び出ている中央が少し凹面のキートップも極めてシャープなデザインでソリッド感満載だ。
そして、キーを押した指先にハネ返ってくるタクタイル感は確実な入力感を満足させてくれる。キートップの表記印刷は単に表面だけの印刷ではなく、金太郎アメのように内部までまったく同じ表記が続くコストの高い構造だ。
それゆえ、長期間使用した場合に起こるであろう特定のキー表面印字が薄くなるとか消えてしまうというトラブルとは無縁だ。
小数点以下の表示桁数の設定や四捨五入、切り捨てなどを指定する2ヵ所のスライドスイッチも、簡単に触れた程度では動かないように適度な硬さにセットされている。頻繁に動かす物でもないし、何かの拍子に勝手に動いてもらっても困るものなので極めて納得できるハードウェア仕様だ。
机の表面と接する電卓底面には、広範囲にシリコン系エラストマー樹脂の滑り止めが張られている。電卓キーをタッチするスピードや個人の入力の癖などでも、滑り止めは極めて重要な機能の1つだ。一般的な電卓と比較すればかなり快適な仕様ではあるが、筆者個人的にはもう少し滑り止めの粘度が高いほうが安心感がある気がした。
底面の大きな滑り止めの下の方に2ヵ所あるビス穴も、小さくカットした同じエラストマー樹脂で隠蔽されている。この2個のネジを取り外すことで、底面が本体から分離し、メモリー保持のためのボタン電池(CR2015)の交換が行なえる。
もっとも、基本的にはソーラーバッテリー電卓なので、CR2025の交換は毎日累積で1時間使用しても7年後となる。
次ページへ続く、「5年という長期保証期間にプレミアムを感じる!」
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