日本HPは9月10日、フラッシュストレージ「HP 3PAR StoreServ」の新モデルを発表した。4コントローラーノードまで拡張できる「StoreServ 8000」ストレージシリーズを投入し、「企業の“シリコンデータセンター”への移行を促進する」とする。
新モデルは、費用対効果を重視したミッドレンジモデル「StoreServ 8200/8400」(税抜価格は200万円/330万円から)、拡張性を重視したハイエンドモデル「StoreServ 8440」(同590万円から)、性能を重視したオールフラッシュモデル「StoreServ 8450」(同590万円から)。
これらは単一のアーキテクチャを採用し、共通の操作性で扱える。容量は単一アレイで最小3TBから最大7PBまで対応。加えて、上位機種の「StoreServ 20000」シリーズと同じ「HP 3PAR Gen5 This Express ASIC」を採用、既存製品と比べ帯域幅を2倍に強化された。
新機能も多数実装。特徴として安定した高いパフォーマンスと低レイテンシを挙げる。StoreServ 8450の場合、IOPSを100万まで上げてもレイテンシは0.4ms以下に抑えられている。こうしたサービスレベルをさらに確保するため、QoSの機能を強化。StoreServのQoSでは、アプリごとにIOPSの下限・上限やレイテンシを設定できる。これにより、予測可能なサービスレベルを実現しているのだが、レイテンシを0.5msまで設定可能になった(従来は1.0msまで)。
バックアップ機能ではVMのデータ保護を強化。「StoreOnce Recovery Manager Central for VMware(RMC-V)」と呼ばれる技術では、StoreServ上でアプリに整合したスナップショットを取り、変更されたブロックを自動で直接「HP StoreOnce」バックアップシステムにコピーすることで、迅速なVMプロテクションを実現。同技術において「VMware vSphere 6.0」や、個々のVMおよびVM内の個々のファイルを復元する新機能がサポートされた。
そのほか、iSCSI機能とSAN機能を強化。前者ではコスト削減のためにiSCSIを検討する顧客向けに、iSCSIレイテンシを減少させ、iSCSI VLANタギングをサポートした。後者ではFibreChannleを介してフラッシュを使用している顧客向けに、「SmartSAN」機能を強化。SANゾーニング設定を自動化・簡素化することで、設定手順を80%不要にしている。
発表会で登壇したHP アジア・パシフィック&ジャパン ストレージビジネス バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのフィリップ・デイビス氏は、タクシーを1台も持たないビジネスモデルで市場に大きな変革をもたらしたUberなどの例を挙げ、ビジネスが大きな変革期を迎えていると指摘。急速に変化する世界で、ストレージの選択肢も複雑化していると述べた。
実際、ストレージの世界ではフラッシュ、ソフトウェア定義、クラウド型、オブジェクト、ハイパーコンバージドと様々なキーワードが登場している。こうしたテクノロジーの変化に沿った新しいモデルが求められているとし、コンバージドシステム「CS700/CS500」、ハイパーコンバージド「CS200-HC」、フラッシュアレイ「3PAR StoreServ」、ソフトウェア定義「StoreVirtual」といったストレージ製品群により、性能重視、コスト重視、拡張性重視のいずれの顧客の要望にも応えられると訴求した。
フラッシュアレイについては2013年に3PARを買収してからの取り組みで、他社よりも事業の立ち上げは遅かったものの、その後の積極的な投資により、Gartnerの調査でオールフラッシュ事業の「成長速度」で1位と報告されている。
新興ベンダーも多いフラッシュアレイ市場だが、日本HPは「ポートフォリオ、ユーザーベース、デリバリーモデルが抜きん出ており、幅広いソリューションと経験豊富なサービスが強みになっている」という。
また、日本HP 執行役員 エンタープライズ事業統括 HPストレージ事業統括本部長の山口太氏は「従来はデータベースの一部やデスクトップ仮想化と活用シーンが限られていたフラッシュアレイだが、最近ではサービスプロバイダやeコマース、基幹システムにまで用途が急速に広がっている」と話す。
その上で、エンタープライズに求められる要件は「スピードとQoS」「基幹で使える堅牢性」「期待を上回るROI」だと説明。特にROIについては、「昨年、フラッシュアレイにおいてGB単価2ドルのモデルを発表した。今回はさらに1.5ドル/GBまで経済性を高めることに成功した」とする。
1.5ドル/GBを実現できた理由は、重複排除などのデータサービス技術の進化とSSDの進化などの総合的な結果だそうだ。ここにミッションクリティカルな要件に対応する「堅牢性」も加えて、今後もフラッシュアレイの活躍の場を広げていく意向を示している。