身体情報が今後のビジネス、エンターテインメントを牽引する
先日女子バレーボールのワールドカップを観ていたら、日本代表の選手たちの最大心拍数に対する現在の心拍数がリアルタイムに表示されていた。どうやら最大心拍数の70%程度が最良のパフォーマンスを発揮できる数値らしい。
今後はスポーツ中継などにおいて、こうしたアスリートたちの身体情報が視聴者にとっても興味深い要素となっていくだろう。ちなみにワールドカップのシステムは、GPS内蔵の高性能スポーツウォッチや自転車に搭載するサイクリングコンピューターなどを開発するフィンランドのPolarのセンシング技術によって実現されている。
もちろん、オリンピックに出場するようなアスリートだけではなく、ジョギングを習慣とする人やマラソン大会への出場を趣味としている人たちは大勢いて(筆者のその一人なのだが)、彼らはトレーニングのたびに自分の身体情報を計測している。
巷間でよく語られるように、ウェアラブルコンピューターはまずこうしたスポーツのジャンルから波及していくに違いない。周知の通り、近年のランニングブームには目を見張るものがあり、ここ数年、多少の鈍化傾向は見られるものの、依然、週一回以上走るランナーの数は実に500万人以上にものぼっているという。
身体や肉体がテクノロジーと連携してエンターテインメント化していく傾向は、Googleの位置情報を利用したオンラインゲーム「Ingress」の例を見ても明らかだ。Ingressのために特別にシューズを新調するプレーヤーなどもいて、2013年のリリース以来、アプリケーションのダウンロード数は1000万を超えたと言われている。
靴といえばLenovoが今年5月に北京で試作品を公開したスマートシューズなども、ウェアラブルコンピューターの今後の展開を示唆したプロダクトと言える。大量消費時代の終焉とともに人々の関心がモノ(商品)の過剰な所有を離れ、自分自身のストーリーが人生における価値の主役に躍り出る中、身体や肉体を通したコト(体験)に重きが置かれる時代になったと指摘されて久しい。このトレンドは今後もますます進行していくものと思われる。
ビジネスの世界においても、「情報産業」は従来の「知的情報産業」と新興の「身体情報産業」に分化していくはずだ。
(次ページでは、「ウェアラブルコンピューターによって自らをアップするようになる」)
この連載の記事
-
第15回
トピックス
ネットの民意がリアルに反映されないケースはなぜ起こる? -
第14回
トピックス
電子書籍がブレイクしない意外な理由とは -
第13回
トピックス
国民半分の個人情報が流出、情報漏えい防止は不可能なのか -
第12回
トピックス
Apple WatchとGoogle Glassは何が明暗を分けたのか? -
第10回
トピックス
ドローンやウェアラブル、Netflixから見る情報のもどかしさ -
第9回
トピックス
PCと人間の概念を覆しかねないシンギュラリティーの正体 -
第8回
トピックス
PCが売れないのはジョブズが目指した理想の終了を意味する -
第7回
トピックス
ビジネスにもなってる再注目の「ポスト・インターネット」ってなに? -
第6回
スマホ
アップルも情報遮断の時代、情報をうまく受け取る4つのポイント -
第5回
スマホ
僕らが感じ始めたSNSへの違和感の理由と対処を一旦マトメ - この連載の一覧へ