人間とパーソナルコンピューターは同じ夢を見るのか
PCと人間の概念を覆しかねないシンギュラリティーの正体
2015年08月25日 10時00分更新
ホーキング博士やビル・ゲイツも危惧する人工知能の脅威
さて、ここで先週テーマにした「パーソナルコンピューターはどうなっていくのか?」という問いに立ち戻ってみよう。いくばくかのノスタルジックな心情を認めつつも、私自身、自らの創造性の拡張装置としてのパーソナルコンピューターが売れなくなっているという事態には微妙に複雑な思いを抱いている。
しかし、一方で、シンギュラリティーは2045年であるかどうかは別として、いずれ必ずやってくるのだろうとも予感している。
実は「ポスト・ヒューマン誕生」の日本語訳が出版されたのは2007年であり、それからすでに8年もの歳月が経過している。その間も、カーツワイル流に表現すれば指数関数的な技術の向上があり、シンギュラリティーはかなり現実味を帯びてきているのだろう。
実際、今年に入ってから物理学者のスティーヴン・ホーキング博士やビル・ゲイツまでもが、公の場で人工知能の危険性を警告している。ホーキング博士にいたっては「人間の終焉」という言葉まで持ち出しているほどだ。
私が抱く「微妙に複雑な思い」の中には、上記の2人ほどの深遠な憂慮には到底及ばないにしても、創造力を駆使できるのはいずれ人間だけの特権ではなくなるだろうというメランコリックな憂愁がある。創造的であることが人間の最後の砦だと思いたい。しかし、正直、確固たる自信はない。
ホーキング博士の危惧する通り、近い将来、人間は終焉するのかもしれない。しかしそれは、人間が絶滅するということではなく、新たな様態に変容するということである。カーツワイルは人間のバージョン1.0からバージョン2.0への移行と表現しているが、実際、われわれはもうパーソナルコンピューター以前、インターネット以前、スマートフォン以前の人間ではない。
テクノロジーに対して恐怖感や嫌悪感を抱く人たちも、ロボットやサイボーグのように定期的にスマホをチェックし、着信がないのにスマホの振動を感じてしまう。こうした身体感覚の変化に「ファントム・バイブレーション・シンドローム」という名前まで付いて報告されている。
(次ページでは、「シンギュラリティー時代の新たな夢とは」)
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