未来を描くスタートアップとマイクロソフトのストーリー 第6回
モノを売るノウハウを集めたプラットフォームを目指す
接客ロールプレイングのクラウド化で営業研修を変えるTANREN
2015年07月21日 07時00分更新
デジタルだからこそ実現できる新しい法人向け教育
EdTech分野に未来を感じた佐藤さんは、ケータイ業界での営業研修ノウハウを元にした教育サービスのアイデアを温め続ける。「一言で言えば、『赤ペン先生の大人版』を作りたかった」(佐藤さん)というコンセプトで、アナログな営業研修にデジタルの手法を取り入れた法人向けの教育システムを提供するTANRENの起業。佐藤さん自身がクラウドコミュニティをリードしてきたノウハウを活かし、起業にまつわる手続き、社内の情報共有、会計・経理、総務的な機能までを、すべてクラウドサービスでまかない、スピーディな事業展開を行なったという。
実際のサービスは、モバイルやクラウド前提でパートナーとともに開発。プラットフォームとして選択したのが、Microsoft Azureになる。佐藤さんは「お客様の大切な接客情報を預かる場所として、真っ先に考えたのが国産クラウド。でも価格が高すぎた。で、セキュリティと動画に強いクラウドってどこか考えると、おのずとマイクロソフト」と語る。また、将来を見据えた拡張性やパフォーマンスから考えても、選択肢は限定されたという。「1週間に1〜2本と考えると、1ヶ月間に10本。数年先にはペタバイトクラスに達してしまう。これに対応できるクラウドは少なかった。しかも、動画をバンバン観ることになるので、パフォーマンスも重要だった」(佐藤さん)とのことだ。
単なるクラウドユーザーとしてだけではなく、マイクロソフトからはベンチャー支援も受けた。米マイクロソフトのベンチャー支援プログラム「BizSpark Plus」によるAzureの特別無償利用枠の提供や、専任エバンジェリストによる技術支援、携帯電話販売だけでなく他の業種へのビジネス展開をも含む協業プラン策定など、多岐にわたるサポートが立ち上げ時の支えとなったという。
TANRENを営業ノウハウを集めたプラットフォームに
TANRENサービスは4月に始まったばかりだが、すでに数多くの代理店から引き合いを受けているという。「10店舗くらいのオーナーさんに営業研修の課題とTANRENでできることを話すと、どストライクではまります」(佐藤さん)とのことで、2015年4月時点で約300店舗で試験運用がスタートしている。
当初は佐藤さんの地場とも言える携帯電話の販売現場をターゲットとしているが、TANRENが目指すのは、多くの事業者が載るプラットフォームだという。「セールスノウハウを集めるプラットフォーマーとしてビジネスをしていきたい。今後、営業課題を浮き彫りにするようなさまざまなデータが集まってくれば、TANRENプラットフォームには教育事業者が載ってきます。こうなると教育事業者とクライアントのマッチングがしやすくなる」とのこと。もちろん、約25兆円の市場規模を誇る携帯電話業界の影響が、小売や流通、サービス業などさまざまな業種に派生していくのは明らかだ。
その先には、TANRENのデータをセンサー発のビッグデータを組み合わせ、グローバルを見据えた店舗のマネジメントレベルまで提案できるという。現在進んでいる店舗のIT武装化を考えれば、この話は決して荒唐無稽ではない。「たとえば、店舗の棚にセンサーを置けば、どこのスマートフォンが一番手に取られているかわかる し、ウェアラブルカメラと顔認識とCRMを連携させTANRENデータと照合させれば、お客様が店舗に入ってきた段階で過去の来店履歴から最適なスタッフに応対するよう指示が出せる」(佐藤さん)という時代を見据え、データの蓄積やサービスの改善を続けるという。
いまだもってアナログな営業現場をクラウドという手法で大きく変革するTANREN。市場環境の変化に対する柔軟な対応が求められる中、モノを売るプロのノウハウやデータを販売するというユニークなビジネスモデルは、携帯電話市場のみならず、幅広い市場での展開が期待できそうだ。
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