特別編 『ケイオスドラゴン』企画 太田克史氏(星海社COO)インタビュー
アニメは"もし虚淵氏や奈須氏がサイコロを振り直したら?"の世界
2015年08月23日 15時00分更新
ゲームで「アニメの主人公になれる!」は嘘っぽい
舞台を10年後にしてアニメの主人公と「同じ立場」を味わうゲームに
―― 今回、『ケイオスドラゴン』のプレスリリースには、『レッドドラゴン』を原作としてアニメ、スマートフォンゲーム、ボードゲームが同時展開して、それぞれの媒体が関連を持って連動していく旨が書いてあり、そこに非常に興味を持ちました。アニメとスマートフォンゲームを、同じ世界の10年前と10年後に設定することで、どんな面白さが出ると思いましたか?
太田 まず、『その10年間に何があったんだろう?』という謎が生まれます。お客さんにとっては、物語の空白を埋める想像の楽しみがあるだろうなと。
時間を飛ばすことで、ゲームを遊んだら『なぜこんなことになったんだろう。アニメはこれからどうなるのかしら?』と思って3ヵ月過ごしてもらいたいし、ゲームのほうは、『格好いいキャラが出てきたけど、アニメを観たら全然違う。なんで?』とか。そういう謎を追う楽しみがあると面白いなと。
その上で、アニメとスマートフォンゲームが連動するわけです。
―― 連動とはどういったものでしょうか?
太田 大きく言うと、「同じ世界観」「世界の中に自分がいる」「歴史が繋がっているアイテムを入手できる」。この3つになります。
1つ目の「同じ世界観」というのは、アニメは世界の中の「ニル・カムイ」という1つの国の話が中心なんですが、ゲームの混沌戦争では世界全体が舞台です。その国の重要人物は10年後も重要人物として存在している。お客さんは「この世界と登場人物の続きや過去を知りたい」という動機で、まだ経験していないほうにも興味を持ってくれると思います。
2つ目の「世界の中に自分がいる」という感覚を持ってもらうための仕掛けですが、アニメの忌ブキくんたちは“混成調査隊”というチームを組んで旅をします。翻ってスマートフォンゲームでは、一番最初にアニメの登場人物・不死商人の禍グラバが登場し、「久々に同じ名前を付けよう」と言って、プレイヤーたちをやはり混成調査隊と命名し、世界を謎の現象から救うために動くよう促します。
つまり、混成調査隊というアニメの登場人物と同じ立ち位置に、ゲームの中でなれるんです。
―― 自分がなる、ですか。
太田 そう。TRPG的に言えば、プレイヤーはその世界の登場人物になりきる、ともいえると思います。
混成調査隊としてゲームの世界を旅するプレイヤーは、アニメの10年後のキャラクターと会ったりするんです。「今はきみたちが混成調査隊なんだ、懐かしいね」とか言ってくれる。それは、アニメのお客さんからするとすごく響くはずなんです。アニメで憧れていた人たちと同じ立場に、今自分がなっているんだという感じに。
ゲームのプレイヤーがアニメと同じ世界で違う時間軸にいるというのは、僕自身、とても気に入っている設定です。ゲームの時代設定を、もしもアニメと同じ時代にしてしまうと、「忌ブキくんになって旅しよう」とするしかなくなって、ゲームとしてウソっぽくなってしまうんです。
そうではなくて、ゲームのケイオス世界でアニメの主人公たちと同じ立場になれるけれども本人たちそのものではない、とすることで、自分がその世界にいるような感覚になる。スケールが大きなケイオスの世界や歴史を感じてもらえるんじゃないかなと。
―― 3つ目の「歴史が繋がっているアイテムが入手できる」というのは?
太田 スマートフォンゲームでは武器や防具を強化していくことになりますが、アニメをリアルタイムで観ていると、「10年前にこのキャラクターが使っていた武器をプレゼントします」といって入手用のシリアルコードが最後に流れたりします。
たとえば、ある回でこの人死んじゃったね、というキャラクターがいたとして、でも、彼が遺した剣がもらえるんだ、という回もあります。武器や防具だけではない、もっと別のすごいものがもらえることもあります。そういう連動の仕方ですね。
アニメからゲームに入る人もいると思います。アニメのお客さんは、世界や登場人物の謎を知りたい人だから、ゲームをプレイすることで、世界の謎を追うことができる。「この世界とこのキャラクターはこんなふうに変わっていくんだ!」とかね。
―― 私はアニメファンですが、「アニメで登場したキャラクターの10年後」というのが気になります。
太田 ゲームも、メインパーティーのメンバーはアニメと同じくしまどりるさんによってデザインされていて、しかも旬の声優さんたちが演じてくれたおかげでさらに魅力的に描かれていますから、好きになったキャラクターがどうなっていくのか、アニメで描かれたニル・カムイとそれ以外の世界がどうなっていくのかを、ゲームで追ってもらうとより楽しんでもらえる仕組みになっていると思います。
(次ページでは、「アニメはサイコロをふり直した世界」)
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