YRPユビキタス・ネットワーキング研究所(以下、YRP UNL)と日本マイクロソフトは7月7日、オープンデータおよびIoTの2分野における技術提携を発表した。YRP UNLが推進するアーキテクチャを「Microsoft Azure」上に実装、提供することで、政府や自治体、公共交通機関におけるオープンデータ提供支援、またIoT分野でのサービス化の促進などを図る。
東京大学教授の坂村健氏を所長とするYRP UNLは、第三セクターとして設立されたユビキタスコンピューティングやIoTの専門研究機関。
YRP UNLでは、現実世界のモノや場所、あるいはコンテンツや情報といったものに付与することのできる、汎用的な128ビット長の固有識別番号「ucode」の国際標準化活動に取り組んできた。その結果、ucodeは2012年にITU-T(国際電気通信連合)の標準規格「H.642」となっている。さらに、ucodeをキーとして、個々のucodeが付与されたモノや場所の属性、意味などの情報をデータベースに格納/取得する汎用的な仕組みを「uIDアーキテクチャ2.0」として開発、公開している。
また、公共交通オープンデータ研究会に参画し、首都圏の公共交通機関が保有するデータの活用を促進する情報流通連携基盤の開発にも携わってきた。
今回の提携により、両社はMicrosoft Azure上にuIDアーキテクチャを実装し、オープンデータやデバイスデータの統合から、ビッグデータ解析、マルチデバイスへのサービス提供までを可能にするプラットフォームを構築する。これにより、政府/自治体や公共交通機関のオープンデータ提供支援、アプリ開発の促進を図る。
また、高精度位置情報を活用したサービスとしてYRP UNLが開発する「ココシル」と「ドコシル」に、43の言語に対応するマイクロソフトのリアルタイムクラウド機械翻訳技術を組み合わせ、海外からの観光客などに対する情報提供を行うサービスを共同で開発する。
加えて、組込みシステム関連の業界団体であるT-Engineフォーラムとの連携により、組込み機器とクラウドサービスや、スマートフォンなどの多様なデバイスとの連携を促進する活動を行っていく。
発表会で坂村氏は、ucodeは2012年に標準化が完了した段階で「(利用を)増やすのはこれからの取り組み」と説明した。国内では国交省が場所コードとして採用するなど、すでに数千万個が利用されており、海外でもEU圏で実証実験での採用が始まっているという。「今回の提携を通じて、オープンデータやビッグデータ活用の推進が図られると考えている」(坂村氏)。
またマイクロソフトの加治佐氏は、具体的なサービス事業化についてはSIベンダーの役割も大きいと語り、東京オリンピックが開催される2020年をひとつのめどとして、国内で実現した形をもってグローバルのマイクロソフトへも展開していくとの姿勢を示した。