テレビ業界で話題のハードディスクレコーダーがある。その名は「SPIDER(スパイダー)」。1~2週間ぶんのテレビ放送全てを録画できる「全録機」的な機能を持った端末だが、それがSPIDERの本質というわけではない。SPIDERには、他社製のマシンとは一線を画す「思想」が隠されている。開発元のPTP有吉昌康代表取締役社長に話を聞いた。
「テレビがつまらないと言う人は、単に面白いテレビ番組と出会えていないんですよ」。こう話すのは、PTPの有吉昌康代表取締役社長。ハードディスクレコーダー「SPIDER」を開発・販売するベンチャー企業を立ち上げた人物だ。
SPIDERは、テレビに接続して1~2週間ぶんのテレビ放送の全てを録画する端末だ。現在は法人用の「SPIDER PRO」のみ発売しており、放送局や広告代理店など400社以上の導入実績を誇っている。
もちろん、単に録画再生を目的としたマシンではない。SPIDERを特徴付けるのは、強力な検索機能だ。番組名や商品名、特定のキーワードなどで検索すれば、録画された全ての放送からCMや番組の該当するシーンまで一覧できる。
例えば「武井咲」と検索すると、武井咲が出演したドラマやCMはもちろんのこと、武井咲本人が出演していなくても、武井咲について言及されているバラエティー番組の1コーナーまで、一度に閲覧できるのだ。
では、どのようにしてこの機能を実現しているのか。有吉氏は、SPIDERの裏側では日本の放送史上初の仕組みが動いていると話す。
「SPIDERは全ての番組内のコーナーとCMに、メタデータ(IDタグ)を付けて判別しています。例えば資生堂の『マキアージュ』のCMだったら、スポンサー企業名や商品名に加え、それが『15秒』で『武井咲』が出ていて『〇×篇』バージョンだ、といったテキスト情報を付けています」(有吉氏)。
実はSPIDERは、日本の全都道府県に設置されている。東京や大阪で作成された放送やCMのデータは、各都道府県のSPIDERから送信された地域ごとのデータと中央のサーバーでマッチング処理され、同じデータがひも付けされる。これを応用すれば、「特定のCMが特定の県で1日に何本流れたのかも、調べようと思えば調べられます」(有吉氏)という。
CMの検索は、日常生活にも有用な機能だと有吉氏は指摘する。「例えば炊飯器を買いたいと思っても、ネットでは情報があふれすぎていて、炊飯器のいまのトレンドや各製品のアピールポイントが分かりにくいです。しかし、SPIDERで各社の炊飯器のCMを検索して一挙に見れば、特徴も分かりやすく比較検討も簡単です」(有吉氏)。