2013年1本目の原稿となります。本年もなにとぞよろしくお願いいたします。今年最初の話題はコーヒーについて。日本でもおなじみのコーヒーチェーン、Starbucks Coffeeとデジタル決済の関係についてご紹介しましょう。
西海岸では嫌われ者という側面も持つ
Starbucks Coffee
話題を振っておいていきなりではありますが、筆者が住んでいる街であるバークレーでは、あまり「スタバ好き!」と言わない方が良いかも知れません。UCバークレーの目の前に1軒、ダウンタウン・バークレー駅の近くに1軒あり、学生などはよく入っているのですが、地元の人は「行かない」「むしろキライ」と言う人が少なくないのです。
とあるカフェで「Starbucked」というステッカーが貼ってあるのを見かけました。脇には「We are alternative」とも添えられています。もともと、Starbucks Coffeeのようにコーヒーチェーンで世界的な成功を収めた点は、ビジネスの面で非常に評価されていましたし、Nike、Appleと並ぶ「新しいアメリカの世界的ブランド」として揺るぎない存在となっています。
しかし急拡大後の2000年代になって、Starbuckedにネガティブな意味合いがつき始めたのも事実です。Starbucksが大量に消費するコーヒー豆を、フェアトレードでの調達にすべきだというムーブメントに端を発し、利益優先で責任を果たしていないという主張を表すキーワードになってしまいました。2008年にTaylor Clark著「Starbucked」という書籍で、Starbucksの成功に対して批判的な論述がなされています。
Starbucksではフェアトレードの豆も扱っていますが、お店で提供するエスプレッソもすべてフェアトレードの認証を受けたものに変え、生産国に貢献すべきだという意見の中で、ライフスタイル・コンシャスなカリフォルニア州ではとりわけラディカルなバークレーの人々から敬遠されるようになったようです。
バークレーで人気があるのは、「Peet's Coffee and Tea」というチェーンです。Starbucksが誕生する以前の1966年にArfred Peet氏が創業したコーヒー店で、現在もバークレーの創業の地にカフェがあります。そしてStarbucksの創業者の1人Jerry Baldwin氏は、Peet氏から学んでシアトルに1号店をオープンさせたという経緯があります。Starbuckedの意味の変容と、地元発祥かつオリジナルという誇りや意地みたいなものを感じることができます。
サンフランシスコ周辺は、ポートランド、シカゴとならんで、「サード・ウェーブ」と呼ばれる新しいコーヒーカルチャーが盛んです。小規模、独立の焙煎所が、オーガニックやフェアトレードなど消費者と生産者に責任を果たしながら、焙煎したての新鮮なコーヒー豆を提供するスタイルが人気を博しています。
この流れも、Starbuckedからアクションを起こす起業家精神によるものと言えるでしょう。サンフランシスコ周辺の面白いスタートアップは、決してテクノロジーに限らないのです。
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