このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

「Google、H.264サポート中止」の背景を探る

2011年01月13日 21時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 米Googleは1月12日(現地時間)、同社ChromeブラウザーにおけるH.264コーデックのサポートを将来的に中止することを発表した。本稿では、この発表の背景について探っていく。Web業界で今まさに何が起こっているのか、これまでの経緯を含めた流れが追えるはずだ。

Googleが、同社ChromeブラウザーでのH.264コーデックのサポートを将来的に中止すると発表

「HTML5」の台頭と「WebM」登場までを振り返る

 現在、ウェブブラウザーを開発する大手各社は「HTML5」と呼ばれるWeb技術の次世代標準サポートに向けてブラウザー製品の改良を続けているが、このHTML5仕様の中で動画再生を可能にする「<video>」タグと呼ばれるものが存在する。

 Webサイトでの動画コンテンツの再生は、多くの場合FlashやSilverlightといったプラグインが仲介することで実現されているが、HTML5の世代ではプラグインが不要になり、ウェブブラウザーのみで再生可能となる。だが、HTML5での動画再生にあたっては、Web上に存在する各動画で必要とされるコーデックを各ブラウザーが一通りサポートしなければならない(Flashの場合はプラグインが複数の動画コーデックをサポートしているため問題ない)。

 現在このコーデックサポートに関して、ウェブブラウザーを開発する各社の足並みが揃っていないのが問題となっており、事実上HTML5でのコーデック標準は空中分解したままとなっている。

 特に、業界の実質的標準となっているH.264をプッシュするAppleやMicrosoftに対し、オープンソース対応を標榜するMozillaやOperaとの溝が深まっている。家電メーカーなど大手各社が特許や技術の主導権を握り、別途ライセンス使用料が発生するH.264のサポートにオープンソース陣営が難色を示しているのが最大の理由だ。加えてAppleなどの陣営は、オープンソース陣営が推進するビデオコーデック Ogg Theoraは品質が不十分として採用に難色を示している。

「Ogg Theora」サイト

 オープンソース陣営に属しながら、そのウェブブラウザーであるChromeではH.264サポートを行なうなど比較的中立の立場をとっていたGoogleだが、過去こうした事態を打開すべくコーデック開発を行なっている米On2 Technologiesを買収し、最新コーデック「VP8」のオープンソース化を実施した。それが「WebM」だ。

 WebMはプロジェクトの名称で、VP8のオープンソース化プロジェクトに当たる。2010年5月に開催された開発者会議「Google I/O」で初めて公開され、この時点ですでにChromeなどのGoogle製ブラウザーだけでなく、MozillaやOperaがサポートを表明した。

「The WebM Project」サイト

 ARMやNVIDIAなどのハードウェアベンダー各社もWebMサポートを表明しているほか、オープンソース陣営から遅れる形でMicrosoftも「コーデックの追加」という条件付きながら、開発中のInternet Explorer 9におけるWebMサポートについて言及した(「Another Follow-up on HTML5 Video in IE9」)。

Microsoftは、The Windows Blog内においてInternet Explorer 9のWebMサポートに触れている

 しかしAppleがこの件について沈黙していたことで、共通コーデックをサポートしないのはSafariのみという孤立状態を生み出している。こうした事態を受け、2010年8月にH.264の特許を管理するMPEG LAでは、Web上に存在する無料動画での利用についてH.264のライセンスを恒久的に無償化する措置をとった(プレスリリースPDF)。

 ここまでが、2010年夏時点までのウェブブラウザーにおけるコーデック論争とWebM誕生までの大まかな経緯だ。別表で各ウェブブラウザーのコーデックサポート状況をまとめておいたので参照してほしい。

HTML5 videoタグにおけるコーデックのサポート状況
ウェブブラウザー Ogg Theora WebM(VP8) H.264
Chrome
Chromium ×
Opera ×
Mozilla Firefox ×
Internet Explorer ×
Safari × ×

ChromeでのH.264サポートは現バージョン限り、Internet ExplorerでのWebMサポートは別途コーデックの導入必要あり。

(次ページへ続く)

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン