b、a、g、n……一体に何が違うの?
無線LAN規格を整理する
現在使われている無線LANの規格としては、IEEE802.11b、IEEE802.11g、IEEE802.11a、IEEE802.11nがあり、それぞれの特徴は以下の表のようになる。
IEEE802.11b | IEEE802.11g | IEEE802.11a | IEEE802.11n | |
---|---|---|---|---|
利用周波数帯 | 2.4GHz帯 | 5GHz帯 | 2.4/5GHz帯 | |
最大通信速度 | 11Mbps | 54Mbps | 54Mbps | 300Mbps(最大600Mbps) |
独立したチャンネル数 | 4 | 3 | 19 | 2/9(40MHz幅) |
MIMO | × | ○ | ||
チャンネルボンディング | × | ○ | ||
電波干渉の可能性 | Bluetoothや電子レンジによる干渉あり | 干渉は少ない | 2.4GHz帯b/gと同様 | |
正式規格策定 | 1999年10月 | 2003年6月 | 1999年10月 | 2009年9月 |
IEEE802.11bは2.4GHz帯を利用し、最大通信速度は11Mbpsである。規格策定は今から10年以上前だが、今でも携帯ゲーム機などベーシックな無線LAN機能を備える機器で利用されている。
しかし、2.4GHz帯はBluetoothや電子レンジなどでも使われており、電波の干渉によって性能が落ちやすいという欠点がある。また利用できる周波数の問題から、干渉を受けずに同時に利用できるチャンネルは3~4チャンネルしかない。たとえばマンションに住んでいて隣室からの電波が届くなど、狭い範囲で複数のアクセスポイントを設置する場合にも問題を抱える。
IEEE802.11bをベースに高速化したIEEE802.11gも基本的には同じ弱点を持つ。ただIEEE802.11b対応機器とIEEE802.11g対応機器を混在して利用できる点は便利なところだ。
一方、IEEE802.11aは5GHz帯の電波を利用し、最大54Mbpsでの通信が可能である。IEEE802.11a対応製品が登場したのは2002年頃からで当初は屋内でしか利用できなかったが、その後利用できる周波数帯が追加され、最大19チャンネルが利用できる。これは大きなメリットだ。
ただIEEE802.11aが用いる電波は周波数が高いため、直進性が強く、陰に回り込みにくいという特性がある。そのため、障害物が多い場所ではIEEE802.11gより速度が落ちやすい。また周波数が異なるIEEE802.11b対応機器と相互に通信を行なうことはできない。そこでIEEE802.11b/gとIEEE802.11aを同時に利用できるタイプの製品も存在しているが、IEEE802.11b/gのみに対応した製品よりは若干高価になる。
同じ「IEEE802.11n」対応製品でも
2.4GHz帯のみ対応する製品と両対応の製品がある
今回の特集で主に紹介するIEEE802.11nは名前は1つでも2.4GHz帯と5GHz帯の両周波数帯を利用できる。ただし、製品によって、2.4GHz/5GHz両対応のものと、2.4GHz帯のみ対応のものがあるので注意したい。なお2.4GHz帯での電波の干渉やチャンネル数の少なさ、5GHz帯での直進性といった弱点は基本的にそのまま受け継いでいる。
またIEEE802.11nは、規格策定が始まってから、正式規格が策定されるまでの期間が長く、規格の草案であるドラフト1.0やドラフト2.0に準拠した製品が販売されてきた。なおIEEE802.11nの正式規格はドラフト2.0にいくつかのオプション機能を追加したものなので、ドラフト2.0対応として販売されている製品はそのまま正式規格対応製品として利用できる。
ただし、一口にIEEE802.11n対応といっても、IEEE802.11nにはいくつかの通信仕様(プロファイル)があり、製品がどのプロファイルに対応しているかによって、最大通信速度が異なるので注意が必要だ。ただ現在一般的な製品は最大300Mbpsもしくは150Mbpsに対応したもの。もちろん、最大300Mbpsでの通信を行なうためには、アクセスポイントやルーターとパソコンなどの両方の機器が300Mbpsでの通信に対応している必要がある。
次ページでは、IEEE802.11nで高速化される上で、重要な技術である「チャンネルボンディング」と「MIMO」の2つについて、詳しく説明しよう。