【最新パーツ性能チェック Vol.45(番外編)】 ようやくAthlon 64 X2も65nm時代へ突入! 消費電力低下のほかにも変更アリ!?
2006年12月30日 21時06分更新
65nm版「Athlon 64 X2 5000+」発表
5日に米AMDは「Athlon 64 X2」の製造プロセス65nmバージョンを発表した。開発コード“Brusbane”と呼ばれていた製品で、これによりTDP(使用時の最大電力)は90nm版の89Wから65Wへと大きく縮小された。当然、発熱量も下がり冷却システムの規模も抑えられるほか、電源ユニットへの負担も軽減され、これらパーツの選択条件も緩和されることになる。内部的なスペックに変更はなく強いて挙げるならL2キャッシュ1MB×2のモデルが今のところ存在しない程度である。65nm版のラインナップは、動作クロック2.6GHzがモデルナンバー「5000+」、同様に2.5GHzが「4800+」、2.3GHが「4400+」、2.1GHzが「4000+」とアナウンスされている。これまでのAthlon 64 X2はライバル製品のCore 2 Duoに後れを取っているという雰囲気だったが、まずは消費電力のステージで巻き返しをという意図が伺える。今回はこの65nm版「Athlon 64 X2 5000+」を試用し、90nm版「Athlon 64 X2 5000+」と比較してスペック表から見えない変更点、消費電力の削減具合をチェックしていくことにする。
製造プロセス65nmバージョンの「Athlon 64 X2」。開発コード“Brusbane”と呼ばれていた製品でTDP(使用時の最大電力)は90nm版の89Wから65Wへと大きく縮小されている | こちらは従来製品。この2つの製品の差について今回は検証を行なっている |
「CPUZ」で65nm版(写真左)と90nm版(写真右)を比較してみる。65nmのリビジョンは空白でExt.Modelの数値が4Bから6Bに変更され、動作電圧は0.05Vアップしている |
テスト環境 | |
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CPU:AMD 65nmプロセス版「Athlon 64 X2 5000+」(2.6GHz) AMD 90nmプロセス版「Athlon 64 X2 5000+」(2.6GHz) |
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メモリ:CORSAIR“CM2X512-8500”×2(DDR2-8500)を定格(DDR2-800、PC2-6400)で動作 | |
マザーボード:ASUSTeK「M2N32-SLI DELUXE」 | |
ビデオカード:Galaxy 「GeForce 7600GS-Z」(PCI Express x16) | |
HDD:WesternDigital「WD740」(74GB SerialATA) | |
光学ドライブ:東芝「SD-M1612」 | |
電源:Abee「SR-1450A」(450W) | |
OS:Microsoft「Windows XP Professional SP2」 |
最大の焦点となる消費電力は?
注目ポイントの消費電力の計測には、団子厨氏の2chトリップ検索ソフト「TripcodeExplorer」(http://tripper.kousaku.in/)を、“2スレッドSSE2有効”に設定して動作させた。このソフトはSSE2有効時のCPU負荷が極めて高く、そのCPUの最大に近い消費電力や発熱量を計測できるからだ。電力計測機器にはサンワサプライ製のワットチェッカーを使用している。
SSE2フル可動で極限に近い負荷がかかる「TripcodeExplorer」で消費電力をチェック。アイドル時で3W、高負荷時で16Wの電力削減が実現されている |
高負荷時の計測結果は65nm版が165W、90nm版が181Wと16Wほど低電力になっているのに加え、アイドル時の消費電力もCnQオンオフともに約3Wほど下がっている。公式TDP数値差まではいかないものの、製造プロセスの微細化が十分発揮できているレベルの低消費電力化が行なわれていると言っていいだろう。このレベルならビデオカードをチップセット内蔵グラフィックなどで省電力志向に走れば、トータル消費電力を150W以内に抑えることは十分可能な数値である。
各種ベンチマークテストの結果
パフォーマンス系のベンチマークテストの結果は、若干ではあるが65nm版のほうが下回っている傾向が見られ、特に「Superπ」の数値差が大きいのが気になるところ。このテストは2次キャッシュの容量と速度が結果に大きく影響するため、製造プロセス変更に伴い2次キャッシュ絡みの仕様変更が行なわれているかもしない。そこで、「Sandra 2007」のキャッシュに関するベンチマークテストを追加で行なってみた。これを見ると、2次キャッシュの容量にあたる64~512KBサイズのテスト結果で大きな差が現われている。どうやら65nm版は2次キャッシュのレイテンシが下げられていると見てよさそうだ。「Superπ」以外のベンチマークテストを見てもわかるように、この影響は目くじらを立てるほどのものではないが、少々残念な部分である。
「Windows Media Encoder 9」でVGAサイズ2分間の動画を、クオリティVBR93の設定でエンコードに要した時間。1秒ほどの差がある |
「3DMark06」のCPUスコア。グラフの関係で大きな差があるように見えるが、スコアは“3”しか差がない |
「Superπ」で104万桁計算実行時結果(シングルスレッド)。差は約1秒 |
「Sismark Sandra 2007」のCPU関連ベンチマークのテスト結果 |
レンダリング速度を計測する「CineBench 2003」のスコア |
「Sismark Sandra 2007」でメモリとキャッシュ関連のテストを実行してみたところ、2次キャッシュに関連する64~512KBの範囲で大きな差が現われている。65nm版はキャッシュの速度が遅くなったとみて間違いないだろう |
若干パフォーマンスは下がっているとは言え、最大で16Wの消費電力軽減は期待通りの結果と言って間違いない。静音や小型PC愛好家には、65nm版によるTDP35W低消費電力版Athlon 64 X2にも期待がかかるところだ。