AMDはAthlon 64とSempronシリーズにDDR2対応の新バージョンを投入する。DDR2対応という意味ではインテルから約2年遅れたが、DDR2-800対応では先を越した。DDR2-666(PC5300)が潤沢に流通するようになったこの時期に、満を持しての登場といえる。新ラインアップ登場と同時に、エンスー向けFXシリーズには“62”が、メインストリームのデュアルコアには“5000+”が投入された。DDR2はAthlonの性能をどこまで引き上げるだろうか?
モデルナンバーとクロックの対応には変更なし
従来、Athlon 64シリーズは“FX”、“X2”を含め939ピン、エントリー向けの“Sempron”は754ピンという切り分けになっていたAMDのデスクトップCPUだが、DDR2対応版ではデスクトップはすべて940ピンの“ソケットAM2”となる。
CPUの外観やサイズは従来の939や754タイプと変わらない。ピンの間隔も同じなので、ひょっとして同じ940ピンのOpteron用マザーに装着できるのか、という疑問がわくが、それはできない。内部で8ヵ所、ピンが抜けている部分の配置が異なっているためだ。
見た目的には限りなくソケット939マザーに近いソケットAM2マザーだが、今回からヒートシンクのリテンションが4ヵ所でのねじ留めとなり、安定性が増した。これは、リテンションとマザーとの固定であり、ヒートシンク自体の取り付け方は変わっていないため、基本的には従来のソケット939用ファンが装着できる。
左からAthlon 64 FX62、Athlon 64-5000+、およびその裏面。パッケージそのもの、ピンの長さ、配置などはおなじみのソケット939と変わらないが、左下に1本ピンが多いことと、内部のピンの欠け方が異なるため、従来のソケット939マザーはもちろん、ソケット940マザーにも装着はできないようにできている |
テストに使用したAsusTekの「M2N32 SLI」。チップセットはnVIDIA製。サウスブリッジから6つのSATA端子が出ているほか、Silicon Image製チップも乗せて、7つめのオンボードSATA端子と、あと1つ、eSATA端子を用意している。ノース、サウスなどはヒートパイプで結ばれ、写真のようなファンでまとめて冷却する |
左は5000+、右がFX62の「CPUID」等。ともにステッピングが「F2」になっている。CPUIDは、5000+が、従来キャッシュ512KBのデュアルコアに割り振られていた2Bから4Bに変わっている。FX62のほうは、キャッシュ1MBのデュアルコアに割り振られていた23が43に変わっている |
FX62のCPUスペックの詳細をSandra 2005で見たところ。「拡張された特長」の最後にある「Secure Virtual Machine」が、コードネーム“Pacifica”こと“AMD Virtualization Technology”のサポートを示している |
今回の製品のラインナップ
今回のラインナップは表1のとおり(Sempronは省いた)。
●表1 Socket AM2版Athlonラインナップ
デュアルコア | 新ラインナップ | 新ラインナップ(LP) | 従来ラインナップ |
---|---|---|---|
2.8GHz/1MB | FX62(125W) | - | - |
2.6GHz/1MB | - | - | FX60(110W) |
2.6GHz/512KB | 5000+(89W) | - | - |
2.4GHz/1MB | 4800+(89W) | 4800+(65W) | 4800+(110W) |
2.4GHz/512KB | 4600+(89W) | 4600+(65W) | 4600+(110W) |
2.2GHz/1MB | 4400+(89W) | 4400+(65W) | 4400+(110W/89W) |
2.2GHz/512KB | 4200+(89W) | 4200+(65W) | 4200+(89W) |
2GHz/1MB | 4000+(89W) | 4000+(65W) | - |
2GHz/512KB | 3800+(89W) | 3800+(65W/35W) | 3800+(89W) |
シングルコア | 新ラインナップ | 新ラインナップ(LP) | 従来ラインナップ |
---|---|---|---|
2.8GHz/1MB | - | - | FX57(104W) |
2.6GHz/1MB | - | - | FX55(104W) |
2.4GHz/1MB | - | - | 4000+(89W) |
2.4GHz/512KB | 3800+(62W) | - | 3800+(89W) |
2.2GHz/1MB | - | - | - |
2.2GHz/512KB | 3500+(62W) | 3500+(35W) | 3500+(89W/67W) |
2GHz/512KB | - | - | 3200+(67W) |
1.8GHz/512KB | - | - | 3000+(67W) |
※★LPは「低消費電力版」の略(製品名ではない)
見てのとおり、デュアルコア製品に通常電力版と低消費電力版がずらりと揃う一方、シングルコア製品は低消費電力版含めわずか3モデルに縮小しているのが目を引く。クロック的に、シングルコアの最上位であるFX57の2.8GHzにデュアルコア製品が今回追いついてしまったこともあり、シングルスレッドのアプリの速度を優先する場合であっても、あえてシングルコアの製品を選ぶ理由があまりなくなってしまった。「同じ値段を出すなら低クロックのデュアルコア製品より、少しでも高クロックのシングルコア製品を」という人向けにいくつかを残した、というところだろう。
もうひとつの注目は消費電力の低減だ。従来ハイエンドでは110Wを基本としてきたAthlon 64 X2がすべて89Wにそろえられたほか、4800+以下については65Wの“低消費電力版”が新登場。さらに3800+については35Wのバージョンまである。その一方で、フラッグシップのFX62については、従来比15Wアップ、AMD史上最大の125Wに引き上げられている。
さて、表を見るとすぐわかるとおり、今回DDR2対応にもかかわらず、クロック・キャッシュとモデルナンバーの対応には変更がない。AMDは、モデルナンバーは性能の相対的な上下関係を示す指標とし、従来、クロックが同じであっても性能が高ければ高いナンバーをつけてきた。今回DDR2メモリコントローラを内蔵したことで、いくらかの性能向上があるはずなのに、あえて従来とそろえてきたのはやや解せないところがあるが、従来のナンバリングを知っている人には、対応を覚え直さずにすむというメリットはある。