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『MX Revolution』はこうして作られた――MX-Rの原点をアイルランドに訪ねて

2006年08月25日 01時22分更新

文● 塩田紳二

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超高速スクロール機能を持つ『MX Revolution』。世界初のレーザーマウス“MX”シリーズに革命をもたらす製品となる
超高速スクロール機能を持つ『MX Revolution』。世界初のレーザーマウス“MX”シリーズに革命をもたらす製品となる

(株)ロジクールが25日に発表した、コードレスマウス『MX Revolution』(MX-R)。その開発は、世界で初めてトラッキングにレーザーを採用した『MX1000 Laser Cordless Mouse』の開発直後から始まっていた。本稿ではMX-Rの設計・開発、デザインについてを、塩田紳二氏によるアイルランドレポートでお送りする。

MX Revolutionはこうして作られた

現在ではどんなパソコンにも、キーボードとマウスが付いている。マウスの価格も千差万別で、安いマウスは数百円で買えるにも関わらず、1万円を超えるマウスもある。そんなマウスのトレンドは、2社の動向で決まる。米マイクロソフト社と米ロジテック社である。

マイクロソフトはOSメーカーとして、パソコンにマウスを導入した。Windowsでは必須のデバイスである。またこれまでには、ホイールや光学トラッキング方式などの新要素をマウスの世界に導入してきた。一方のロジテックは、パソコンメーカーへのOEM供給元としてマウスを生産するかたわら、自社ブランドでも販売を行なっている。同社はコードレスマウスやレーザー、フォースフィードバックといった機能を開発して、マウスに導入してきた。

2004年に登場した世界初のレーザートラッキング採用マウス『MX1000 Laser Cordless Mouse』
2004年に登場した世界初のレーザートラッキング採用マウス『MX1000 Laser Cordless Mouse』

今年の6月、筆者はMX-Rなどの開発やデザインを行なう拠点であるアイルランドのDesign Partners社を取材した。そのときの模様を交え、MX-Rがどうやって作られていったのかをレポートしよう。

レーザーの次は?

マウス市場の競争は激しく、安いものでは前述のように1000円を切った価格で販売されている。また大手のうちの1社は、IT業界でも最も大きく強力なマイクロソフトである。このためロジテックは研究開発面でも、手を抜くことができない。そうした状況下で2004年に登場したのが、レーザーを初めて使ったマウス、MXシリーズである。そしてそれから2年、新たなコンセプトで登場した最上位機種が、このMX-Rである。

レーザーの次にくる“Next Revolution”を考えるにあたって、同社はユーザーのパソコン利用形態を調査した。すると平均的には同時に6本以上のアプリケーションを動かし、50秒ごとにアプリケーションを切り替えていた。さらにホイールの回転は1日あたり、8mに達していることが分かったという。

同社の調査によると、平均的なパソコンユーザーはスクロール操作のために、1日8mもホイールを動かしている
同社の調査によると、平均的なパソコンユーザーはスクロール操作のために、1日8mもホイールを動かしている

またマウスに対する要望としては、“スクロールを速くしたい”という要望が上位にきていた。つまりスクロールやソフトウェアの切り替えの機能・性能を向上させることで、マウスに対するユーザーの満足度を上げられると判断された。

こうした機能に対する要求の一方で、マウスのデザイン面ではハイエンドな製品であることを鑑みて、対象となるユーザー像にコンピューターを使いこなす“Enthusiast(エンスージアスト)”を想定した。そして、その対象に訴求する“機能の(強い)印象”“明確なアドバンテージ”“かっこよさ”を備えたデザインが考えられた。イメージとしては、金属の質感や大型オートバイのメカニズム感、ジェット戦闘機のイメージなどが考えられた。

MX-Rのデザインコンセプト。オートバイやジェット戦闘機からイメージを得ている MX-Rの製品イメージを伝えるためのデザインラフ
MX-Rのデザインコンセプト。オートバイやジェット戦闘機からイメージを得ているMX-Rの製品イメージを伝えるためのデザインラフ

つまりMX-Rは、“スクロールやソフトウェア切り替えを素早く行なう”という機能を、こうしたイメージとして実現するものという方向性で作られることになった。

ロジテックのマウスはアイルランドで設計・デザインされている

アイルランド、コークにあるロジテックのマウス開発部門
アイルランド、コークにあるロジテックのマウス開発部門

ロジテックのマウスは、アイルランドで設計が行なわれている。場所は首都のダブリンから電車で1時間ほどの、コークという都市である。かつて、この地に同社のマウス工場があり、そこに設計部隊がいたからだ。アイルランドというと、日本では英国との関係でしか語られないことが多いが、かつてはヨーロッパ企業の生産拠点が多かった。ロジテックは元々スイスで創業したため、ここに工場を持っていた。工場は台湾に移転したが、設計部隊はここに残ったわけだ。

ちなみに同社のキーボード関係の開発部隊や研究拠点は、スイスにあるという。一方米国の本社では、ソフトウェア関連の開発を行なっているとのことだ。

MX-Rのデザインは、回転する部分にはオートバイのホイールを、全体の形にはジェット戦闘機をイメージの原点にしている。左側面にあるホイール似のスイッチは回転しないものの、デザイン的にホイールに合わせてあり、本体左側はえぐれた上に下側が張り出している。

最終的な形になるまでは、多くのモックアップが作られた。デザインを担当したDesign Partners社はダブリンの郊外にある。これまでにロジテックのマウスやキーボード(diNovo Codeless Desktop)のデザインを手がけたほか、米パーム(Palm)社の“Treo”や、“Screwpull”ブランド(仏Le Creuset社)のコルク抜きのデザインなども行なっている。匡体デザインを多く手がけるDesign Partnersでは、軽量のプラスチックを削ったり、粉体による立体造形機器などを使ってモックアップを作成した。その中から候補を絞っていくことで作られたのが、完成したMX-Rのデザインである。

マウスのデザインについて解説するDesign PartnersのPeter Sheehan氏 MX-Rのデザイン過程。手前のモックアップからスタートし、だんだんとコンセプトをはっきりとさせ、最終的なデザイン(写真奥)に到達する
マウスのデザインについて解説するDesign PartnersのPeter Sheehan氏MX-Rのデザイン過程。手前のモックアップからスタートし、だんだんとコンセプトをはっきりとさせ、最終的なデザイン(写真奥)に到達する

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