東日本旅客鉄道(株)、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ、ソニー(株)の3社は22日、“モバイルSuica”サービスを2006年1月に開始すると発表した。これは、ソニー(株)の非接触ICカード技術“FeliCa(フェリカ)”のICチップを内蔵するNTTドコモの携帯電話を使って、JR東日本が提供中のICカードを使った乗車システム“Suica(スイカ)”と同等のサービスが受けられるようになるもの。さらに、NTTドコモの“iモード”通信網を利用した電子マネーのチャージ/定期券の購入や、携帯電話の画面でイオの使用履歴が確認できるようになるなど、ICカードにはないサービスも用意する。
モバイルSuicaで、2006年1月に提供開始が予定されているサービスは以下のとおり。サービス対象地域は、首都圏、仙台圏、新潟圏。
- 電子マネー、定期券、普通列車グリーン券のサービス
- 携帯電話のネットワークを使った定期券の購入
- 携帯電話のネットワークを使った電子マネー“イオ”のチャージ
- 携帯電話の画面上で、電子マネーの使用履歴/残高の表示
- 駅のコンビニエンスストア“NEWDAYS”などSuicaの電子マネーが使用可能な全店舗での買物
そのほか、2006年度後半(2006年10月~2007年3月)にはチャージした電子マネーを使ったネットショッピングを、2007年度には新幹線指定券の購入と自動改札機の入出場などに対応する予定。
JR東日本はモバイルSuicaの商用化に向けて、2004年の2月から8月に第1期の実証実験を行ない、携帯電話を使った自動改札の入出場などを検証。今年3月から秋にかけては実証実験の第2期として、第1期の内容に加えて電子マネーの機能などを検証する(いずれも、関係会社の職員を対象としたもので、一般公募による実験の実施は未定)。最終的には、通信機能などすべての機能を対象とした検証を行ない、2006年1月の商用化を迎える予定。
Suica事業はJR東日本を支える3本柱の1つ
JR東日本代表取締役社長の大塚陸毅氏 |
JR東日本は、“Suica事業”を、“鉄道事業”“生活サービス事業”と並ぶ同社の第3の柱と位置付けている。Suicaのサービスが始まったのは2001年11月18日で、2004年10月26日に発行枚数1000万枚を突破、2月22日現在の発行枚数は1090枚という。約3年間で1000万枚を突破したことに対してJR東日本代表取締役社長の大塚陸毅氏は、「鉄道分野の利便性の向上とあわせて、電子マネーなど鉄道分野以外での機能強化が利用者に評価されている」と分析し、Suicaの電子マネー機能が現在毎日8万件利用されていること、「2008年度には1日400万件の利用を目指している」ことを紹介した。また、今後の鉄道事業分野でのSuicaの利用については、「関東地区では、公民鉄/バス事業者との相互利用について鋭意進めており、2006年度中には実現できる見通し。そうなると発行枚数は2500万枚を超え、一段と大きなインフラになるだろう」と期待を寄せている。
Suica発行枚数の推移(プレゼンテーションより) |
モバイルSuicaについては、「(現在のICカード版)Suicaに、通信機能と画面表示機能が追加されたものと考えると、わかりやすい。これによってSuicaの利便性は飛躍的に向上し、鉄道を利用する方にも、駅構内を中心にショッピングをされる方にも(使いやすいものとなり)、収益に貢献することが十分考えられる」とした。また将来的には、決済/ポイント交換/情報配信サービスなど、モバイルSuicaが1つのサービスプラットフォームとして発展していくだろうと大きく期待を寄せている。またモバイルSuicaの普及によって、窓口や券売機のスペースなど従来の駅構内のスペースが整理統合され、「駅という資産価値の高い場所」の使い方が見直されるとも予想している。
Suicaとの協業で電子マネーを生活に浸透させたい
FeliCaのICチップを内蔵する“おサイフケータイ”の販売台数が今月12日に200万台を突破したNTTドコモは、モバイルSuicaの商用化を、「鉄道という生活にかかせない生活に密着したインフラとの融合であり、携帯電話が“生活インフラ”として進化する非常に大きな第一歩」(NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏)だと非常に重要視している。同社は、携帯電話が通信/通話ができる“通信インフラ”からメールやウェブサイトの閲覧ができる“ITインフラ”へと進化し、今後は生活インフラとして発展することを目指している。
おサイフケータイの販売台数(プレゼンテーションより) |
Felica技術を開発したソニーは、モバイルSuicaの普及によって、電子マネー市場が拡大することを期待している。ソニー代表執行役社長の安藤国威氏は、「最も身近で最も利便性が高い2つ(Suicaと携帯電話)が融合するので、これが生活におけるインフラ的なものとして定着してしまえば、いろんな機能を付加したり、いろんなサービスに使えたりできる」と、将来的な広がりに注目している。電子マネーという観点でSuicaはソニーの“Edy”と競合関係にあるが、「とにかく、まずはこの世界(電子マネー)を広げる。その中で、互換性を広くかけていく」と述べた。
なお、NTTドコモ以外の携帯電話通信会社との同様の試みをする可能性についてJR東日本は、「NTTドコモ以外の携帯電話会社にもご提案申し上げているところ。当社の考え方に賛同いただけることであれば、協力して進めていくことになる」(大塚氏)と強調した。また、これを受けてNTTドコモの中村氏は、「Felicaを搭載した携帯電話は、auもやるし、ボーダフォンもやると思うので、携帯電話全体がこうしたこと(生活インフラ)に入っていくのはウェルカムだ」とした。
また、モバイルSuica事業のグループ鉄道会社への拡大についてJR東日本は、「Suicaの一番最初の機能“列車に乗れる”というのはJR西日本(サービス名は“ICOCA”)と共通化しているので、JR西日本から電子マネーについて進めたいという話があれば、当然できる範囲で協力するし、他の各社もこういうカードを発行したいというのであれば協力するのはやぶさかではない」(大塚氏)とした。
「Suicaとともに成長したいです」(西原さん) |