アドビ システムズ(株)は24日、東京・大手町のアーバンネット大手町ビル内東京會舘にプレス関係者を集めてラウンドテーブルを開催した。米アドビ システムズ社が同日に2004年第2四半期(2004年3~5月)の決算を公開、事前の予想を上回る好調な業績を報告するとともに、日本法人が積極的に進めている企業/官公庁向けのドキュメントソリューションなどについて今後(2004年下半期以降)の方向性を示した。
ラウンドテーブルの出席者。左から代表取締役社長の石井 幹氏、ソリューション営業本部本部長の古澤康男氏、インテリジェントドキュメント事業部長の市川 孝氏 |
会場には、代表取締役社長の石井 幹(いしいみき)氏、ソリューション営業本部本部長の古澤康男(ふるさわやすお)氏、インテリジェントドキュメント事業部長の市川 孝(いちかわたかし)氏らが出席、米国での業績発表の詳細や日本で現在進めている事業プランなどを報告した。
“Adobe Intelligent Document Platform”のイメージ図 | Document Serviceカテゴリーの製品群 | エンタープライズ市場におけるアドビのドキュメント製品群の位置づけ |
石井氏は、アドビ システムズ全体のビジネスの基本を「電子ドキュメントソリューションを主軸に据えて“人々の、そして企業間のコミュニケーションをより豊かにする”をスローガンに、今後もPDFをメインとしたドキュメントソリューションを展開していく」と切り出した。同社の事業は、石井氏が代表取締役社長に就任した2002年から、それまでの単なるアプリケーション開発/販売企業から、プラットフォームを提供するソリューション企業へと大きく舵を切った。その転機となったのが、2002年の米アクセリオ社の買収だったと振り返った。現在同社がターゲットとする市場は、
- エンタープライズ(ドキュメントサーバー製品群)
- クリエイティブプロフェッショナル(画像/ビデオ編集、ページレイアウトなどプロ向けソフト)
- コンシューマー(『Photoshop Elements』『Photoshop Album』などエンドユーザー向けソフト)
の3つで構成される。「今後もコンシューマー向けには、ライフスタイル全体を豊かにする製品を投入していきたい」とサーバー/ソリューション製品群やプロ向けソフトだけでなく、コンシューマーユーザー向け製品にも注力する姿勢を見せた。
前期比70%の高成長を達成
次に米国で発表されたアドビ システムズ全体(ワールドワイド)での業績を具体的に発表した。なお、日本単独での業績については公表していない。
アドビ システムズ全体での売上高の推移 |
2004年第2四半期(3~5月)の決算発表
- 売上高
- 4億1010万ドル(約442億9080万円、前期比成長率 128%)
- 営業利益
- 1億4180万ドル(約153億1440万円、同 154.9%)
- 純利益
- 1億940万ドル(約118億1520万円、同 170%)
- 一株あたりの利益
- 0.44ドル(約47円、同 162.9%)
好調な業績の理由として、石井氏は
- 日本では今年1月、米国では昨年末に発売した『Photoshop CS』『Illustrator CS』『GoLive CS』『InDesign CS』で構成される“Creative Suite”の販売が堅調だったこと
- PDFを中心とした電子ドキュメント作成/管理ソリューションが企業や官公庁に導入(試験導入を含む)が始まり、成長を遂げたこと
- 日本では3月から4月という年度末/年度始めの需要が高まる時期に当たったこと
などを挙げた。地域別の売上分析では、米国が44%、欧州が33%、アジア地域は23%でアジア地域の大半を日本が占めるという。
下半期のビジネス活動としては、
- Adobe Intelligent Document Platformの訴求
- Document Serviceを実現する製品群の提供
に力を入れると語った。これらは企業や官公庁のビジネスシーンにおいて、今でも紙(印刷出力や帳票)の役割が大きく、電子ドキュメントとの効率的な共存が優先課題と考えたためだという。石井氏は「米国でのある調査によると、電子ドキュメントと紙の共存は業務全体の80%にのぼり、両方が広く使われていることを示す。一方で文書の処理ミスが企業売上の12~15%をロスさせている。データの再入力(紙に手書きしたり印刷した情報を電子ドキュメントに入力しなおす)のためのだけに、年間15億ドルが費やされている」と述べ、これらを解決するための同社のソリューションに大きなビジネスチャンスを見出していることをアピールした。
みずほ銀行の企業向けオンラインバンクに導入している、PDF&XMLを用いた電子ドキュメントソリューションの実例 | 現在はウェブブラウザー上から必要事項を記入し、最終的には印刷したものに印鑑を押して申し込みを行なう。将来的にはこれをすべて電子化し、記入した結果の承認や決済、申し込みなどの処理をすべてオンラインで行なうという |