(株)ソニーと(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ(NTTドコモ)は27日、非接触ICカード技術“FeliCa(フェリカ)”を搭載する携帯電話向けのサービス実現に向けて、合弁会社“フェリカネットワークス株式会社”を設立することで基本的な合意に達したと発表した。FeliCaの技術はソニーが開発し、東日本旅客鉄道(株)の乗車システム“Suica(スイカ)”やビットワレット(株)の電子マネーサービス“Edy(エディー)”などで採用されている。今回、FeliCaの技術を携帯電話に搭載することにより、決済/認証などのサービスと組み合わせて、非接触ICカード市場の拡大と、同市場でのFeliCaの定着を狙う。新会社の資本金は約60億円で、出資比率はソニーが60%、NTTドコモが40%。設立時の従業員数は約90名で、2004年1月の設立を予定している。所在地は東京都。
左から、ソニー代表執行役会長兼グループCEOの出井伸之氏、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ 商品企画部統括部長で新会社社長に就任予定の河内聡一氏、NTTドコモ代表取締役社長の立川敬二氏 |
記者発表会で放映されたビデオでは、FeliCa搭載携帯電話を駅の自動改札で乗車券として使うという内容のものもあった。JR東日本など鉄道会社との提携は、現時点で発表されていない |
同日都内で開催された記者発表会には、新会社社長に就任する予定のソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(株)商品企画部統括部長の河内聡一氏が、ソニー代表執行役会長兼グループCEOの出井伸之氏とNTTドコモ代表取締役社長の立川敬二氏とともに出席した。河内氏が挙げた、新会社の事業は以下のとおり。「ひとつでも多くの通信事業者/メーカー/プロバイダーに対し、FeliCaを使ったサービス/アプリケーションを展開していただくための手助けをしたい。最終的にはFeliCaによる、エンドユーザーにとって魅力的なライフスタイルを創出したい」(河内氏)。
- 携帯電話とFeliCa機能を融合する新ICチップ『モバイル FeliCa IC』(仮称)の技術開発と、チップメーカーに対する製造・販売ライセンス事業
- コンテンツサービスプロバイダーに対し、FeliCa機能を使い携帯電話向けサービスを提供するためのプラットフォームの構築と運用
FeliCaの技術開発元であるソニーの出井氏は、NTTドコモと合弁会社を設立した理由について、「携帯電話の端末メーカーという意味では(他メーカーにとって)ソニーは競合であり、ソニーだけではFeliCaの技術は普及しないと考え、NTTドコモと一緒に事業をすることで中立的な技術を提供する会社にしたいと考えた」としており、FeliCaの技術はオープンな環境で提供/販売され、「(NTTドコモと競合する)auの端末にも搭載していただいてもいい」とNTTドコモの立川氏は述べた。
記者発表会で紹介されたFeliCa搭載携帯電話の利用シーンは、(1)駅の自動改札で乗車券として使う、(2)スーパーマーケットのレジなどで財布代わりに使う、(3)コンサート等の電子チケットとして使う、(4)スポーツクラブの会員証として使う――といったもの。NTTドコモの立川氏は「全ての端末に(FeliCa技術を)標準搭載することを考えている」と述べたが、同社iモード事業本部iモード企画部長の夏野 剛氏は「2004年の夏ごろ、中ごろ、FOMAとPDCのFeliCa対応数機種を商用で展開」と説明した。また今年12月には、『SO504iC』『N504iC』というNTTドコモの“504iシリーズ”の携帯電話をベースに開発された専用携帯電話を使い、パートナー企業とともに、試行サービスを行なう予定。モニター端末の台数は合計6000台と発表されているが、スケジュール等の詳細は後日発表という。
試行サービス向けのFeliCa搭載携帯電話を紹介する、NTTドコモ iモード事業本部iモード企画部長の夏野 剛氏。「今年の初め頃に久夛良木氏(ソニー取締役副社長の久夛良木 健氏)と『これだったら一緒にやっちゃったほうがいいんじゃないのー』なんて話をしていたら実現して、“言い出しっぺ”として極めて誇らしい気分で今日を迎えた」 |
なお、赤外線通信機能を使った認証/決済/出力などのサービスを提供しているサービスプロバイダーがすでにあるが、NTTドコモは、FeliCaの商用サービス開始後も赤外線通信機能を引き続き携帯電話に採用していくという。夏野氏は非接触ICと赤外線との違いについて「(非接触ICカードのリーダーライターに)かざすだけか、(携帯電話を開いて赤外線通信メニューを)起動するか」だとFeliCaの使いやすさを強調した。なお、ソニー以外にも非接触IC技術を研究する企業があるが、「できたものから順番に入れていきたい」(立川氏)という。
会場には、SO504iCと、NTTドコモが作成したデモンストレーション用のFeliCa対応“iアプリ”(Javaアプリケーション)が展示されていた。内容は、iアプリとインターネット接続サービス“iモード”を連携させて、チケットレスでスポーツ観戦をしたり、スポーツジムのトレーニングプログラムを予約したり、スーパーで電子マネーで買い物をしたりするもの。なお、これらデモ用アプリにはユーザー認証機能が搭載されていないが、商用時にどのような仕様になるのかは、現時点では明らかにされていない。
会場に展示されていたSO504iC(前面) | SO504iC(背面)。液晶パネルの方の筐体、iモードマークの“i”の下にFeliCa対応の新ICチップが内蔵されている | |
SO504iをベースに開発されたSO504iC |
これは、チケットレスでサッカー観戦をするというイメージのデモ。前出のメインメニューでe-TICKETメニューを選び、さらにワールドサッカー日本戦を選択 | 日本-イングランド戦のチケットを2枚購入 | 今度は競技場に行って、入場ゲートに設置されたFeliCa用リーダーライターにFeliCa搭載携帯電話をかざして認証を受けたつもり | ||
チケットレスでサッカー観戦をするというデモ |
これは、スーパーマーケットで電子マネーを使って食品を買うというイメージのデモ。前出のメインメニューでe-WALLETメニューを選択し、さらにチャージメニューを選ぶ | 現在利用できるのは5000円。さらに500円チャージすることにした | 残高が5500円になった | ||
スーパーマーケットで電子マネーを使って食品を買うというデモ |