マイクロソフト(株)は12日、次世代パソコンのひとつの形態として同社が提唱している“Tablet PC(タブレットPC)”向けのOS『Microsoft Windows XP Tablet PC Edition』日本語版をハードウェアメーカーに供給、国内メーカーがタブレットPCを今秋より順次発売すると発表した。
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タブレットPCについて説明する米マイクロソフト社タブレットPCビジネスデベロップメントグループマーケティングマネージャーのAndrew Dixon氏 |
タブレットPCは、手書きで利用できる次世代のモバイルパソコンで、同社は「ノートパソコンが進化したもの」と説明している。既存のOS『Microsoft Windows XP Professional』に、手書き認識機能、音声認識機能、手書き用ユーティリティーソフトなどを追加したOS『Microsoft Windows XP Tablet PC Edition』を搭載しており、ペンによるパソコン操作や手書きでのメモ取り、パソコンで作成した文書へ手書きで注釈を加えるといったことが可能になる。
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Windows XP Tablet PC Editionの概要 |
具体的には、Windows XP Professionalの全機能に加えて、メモ書きユーティリティー(Windows Journal)、手書き認識エンジン、手書き入力ユーティリティー(TIP:タブレットPC入力パネル)、音声認識エンジン、付箋紙、ジェスチャーAPI、ジェスチャー認識エンジン、スタイラス(ペン)ドライバー、デジタルインク(手書き文字)コントロールなどを搭載している。
| タブレットPCは縦画面/横画面の両方に対応。写真はTIP(タブレットPC入力パネル)を利用して、ペンによる手書き入力を行なっている画面。なおTIPでは手書き入力のほかソフトキーボードによる入力も可能 |
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デジタルインクコントロールとは、手書きで入力したデータを“デジタルインク(手書き文字)”として認識し処理するためのもので、手書きで入力したものをテキスト変換する必要がない。また、デジタルインクデータフォーマットを単なるビットマップデータとしてではなく、テキストの最上位フォーマットとして取り扱うため、手書き文字のまま検索したり、文字を加工(カラー変更など)したりすることが可能。
| Windows Journalを利用して書いた手書きメモの画面。書いた文字はデジタルインク(手書き文字)としてそのまま認識されるため、書いた後に文字の色を変更することも可能。デモでは“133”の文字色が青から赤に変更された |
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| さらに“形が変わる”という文字を選択し、検索ボタンを押すと…… |
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| 検索結果として、以前手書きで書いた“形が変わる”という文字の入ったファイルが表示される。そのほか、紙ではできないデジタルならではの機能として、余白を挿入したり、手書き文字をテキスト変換してクリップボードに貼り付けたりできるという |
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なお、Windows XP Tablet PC Editionは、Windows XP Professinalの上位バージョンと位置づけられており、既存のWindowsアプリケーションもそのままタブレットPC上で動作する。また、タブレットPC向けにMicrosoft Office XPを機能拡張できるアドオンパッケージを、タブレットPCの出荷と同時期に提供するとしている。
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タブレットPC用のアドオンパッケージを利用したMicrosoft PowerPointのデモ。画面右下に表示されているツールバーを利用してペンでページ送りをしたり、文字にハイライトを入れたり、注釈を追加したりできる |
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タブレットPC用のゲーム『インクボール』。ペンでボールを反射させるゲーム |
タブレットPCの本体デザインは、既存のノートパソコンと同様のデザインで画面部が180度回転する“コンバーチブル型”と、パネル形状でキーボードのない(もしくは取り外し可能なキーボードが付く)“ピュアタブレット型”の2種類に大別される。両タイプとも持ち運びやすいサイズ/重量で、バッテリー駆動時間は6~8時間程度という。
タブレットPCのハードウェア要件は、電磁誘導式デジタイザーとペンの搭載、ドッキングステーションをサポートしている場合突然ステーションからタブレットPCを取り外してもシステムが不安定にならない、スタンバイ状態から即座に立ち上がる、レガシーフリー設計(シリアルポート/パラレルポートがない)、リブートなしで縦画面/横画面をネイティブ解像度で切り替え可能、Ctrl-Alt-Delキー専用ボタンの搭載、など。
タブレットPCは、今秋より国内のパソコンメーカーから順次発売される。現時点でタブレットPCの発売を表明しているメーカーは、(株)ソーテック、(株)東芝、日本電気(株)、日本ヒューレット・パッカード(株)、富士通(株)の5社だが、同社は他メーカーとも話し合いを行なっており、「本日時点で発表できるのは5社」としている。
タブレットPCの価格や具体的な出荷時期は、パソコンメーカー各社によって決定される。マイクロソフトは、OEM供給するWindows XP Tablet PC Editionのライセンス価格についてはまだ最終決定していないというが、Windows XP Professionalの上位バージョンとなるためそれ相応に高くなるだろうとしている。また、タブレットPCの価格は、ハードウェア面では既存のノートパソコンと大きな違いはないため、最新のハイエンドモデルと同等の価格帯になるだろうという。なお、Windows XP Tablet PC Editionのパッケージ販売はない。
また同社は、タブレットPCの手書きや音声認識機能を利用した新しいアプリケーションを開発できるよう、開発者向けにベータプログラムを提供するという。
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発表会場では、NECとソーテックのタブレットPC試作機が参考出展された。写真はタブレットPC試作機を紹介するマイクロソフト製品マーケティング本部Windows製品部部長の御代茂樹氏 |
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NECのタブレットPC試作機(横画面) |
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NECのタブレットPC試作機でWindows Journalを起動し、手書きメモを書いている様子(縦画面) |
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ソーテックが参考出展したタブレットPC『AFiNA Tablet(仮)』(試作機)。一見ただのノートパソコンのように見えるが…… |
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本体両端にあるボタンを押すと、画面部を回転させることが可能 |
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まだ回ります |
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180度回転させたら折り畳める |
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折り畳むことで、タブレット形状に変化 |
本日都内ホテルで行なわれた発表会で、製品概要を説明した米マイクロソフト社タブレットPCビジネスデベロップメントグループマーケティングマネージャーのAndrew Dixon(アンドリュー・ディクソン)氏は「タブレットPCは既存のノートパソコンの上位バージョン。モバイル性が高く、ペンや音声によるサポートを実現する。なぜ今タブレットPCなのかとよく聞かれるが、理由は3つ。まず、タブレットPCは既存のノートパソコンの上位バージョンであり、何も犠牲にしていないこと。そして、テクノロジーの進歩により、液晶ディスプレーが高解像度となり、CPUも低消費電力/高性能で以前ほど熱くならなくなった。最後に、デジタルインクによって手書きメモを手書きメモとして利用できる。これはペンと紙の世界とコンピューターの世界を融合するものだ」
「タブレットPCの対象ユーザーは、外出の多いユーザーや、会議の多いユーザー。また、医療や保険、金融サービス、製造業など特定業種向けにも活用できるだろう。ビル・ゲイツは“今後5年間でタブレットPCはポータブルパソコンの大半を占めるだろう”と言っている。タブレットPCはパソコンの進化を示している。既存のパソコンが利用できないところでもタブレットPCは使えるだろう。さらに、タブレットPC向けに新しいアプリケーションが登場するだろう。また、タブレットPCをMicrosoft .NETのクライアントとして最も強力なものにしたい」と語った。