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米MSのバルマーCEOが東大で講演──「今後10年のIT革新は過去の10年よりも大きい」

2002年06月24日 23時45分更新

文● 編集部 佐々木千之

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マイクロソフト(株)と東京大学大学院情報理工学系研究科は24日、東大本郷キャンパス内の安田講堂で“Bridging People and Society - 人と社会を繋ぐ情報環境”と題したシンポジウムを共同で開催した。来日中の米マイクロソフト社CEOのスティーブ・バルマー(Steve Ballmer)氏が基調講演を行ない「これからの10年でこれまでの10年以上の革新が続く」などと語った。

マイクロソフトと東京大学は1998年頃から共同研究に向けた準備を開始し、2001年7月には共同研究の最初の成果として“話し言葉によるサポート技術情報検索サービス”を発表している。

これからの10年は“デジタルの10年”

バルマー氏のスピーチは、大きな声やダイナミックなアクションで知られているが、今回の基調講演でも大きな身振り手振りを交えながら、居並ぶ学生に、これからもIT、そしてマイクロソフトも革新を続けるというメッセージを投げかけた。

米マイクロソフト社CEOのスティーブ・バルマー氏
米マイクロソフト社CEOのスティーブ・バルマー氏

バルマー氏はまず「よくITの進歩は終わったのかと聞かれるが、私は今後の10年はこれまでの10年以上に大きな革新が起こると信じている。それはハードウェアの革新が今後10年はまだ続くからだ」と切り出した。これはマイクロソフトが“The Digital Decade(デジタルの10年)”と呼んでいるビジョンで、ビル・ゲイツ(Bill Gates)会長兼チーフソフトウェアアーキテクトが1月の“2002 International CES”の基調講演で示したもの。さまざまな技術革新によってデジタル技術をいままでよりもっと自由に使って豊かな生活を享受できる時代を指している。

バルマー氏が今後10年、IT革新が続くという根拠として示した技術のトレンド
バルマー氏が今後10年、IT革新が続くという根拠として示した技術のトレンド

バルマー氏は大きな技術革新がこれからも確実に起こるとしながらも「テクノロジーによって可能になることと、ユーザーが望んでいることのギャップを埋め、整合性をとることが重要だ」と述べ、単に技術革新のみを進めるだけでなく、ユーザーのニーズを捉える必要があるとした。

研究中の技術として示した“Ringcam”
研究中の技術の例として示した“Ringcam”。会議用のシステムで、5つのカメラで360度を撮影しており、発言した人の映像に自動的に切り替わる仕組み

そして、Digital Decadeのためにマイクロソフトが進めている研究成果のいくつかについて説明やデモンストレーションを行なった。最初に紹介したのは今秋にハードウェアメーカーが発売を予定している『Tablet PC』。「マイクロソフトで打ち合わせのときに一番恥ずかしいと思っているのは、PowerPointのスライドをプリントアウトして配っていることだ。これはみんながスライドに書き込みをしたいから。無線LANで接続されたTablet PCであれば、スライドに書き込みもできる。こうしたものが出てくれば、向こう何年かでビジネスにおける生産性が大きく向上するはずだ」という。

マイクロソフトリサーチで研究中のテキスト読み上げシステムの概要
マイクロソフトリサーチで研究中のテキスト読み上げシステムの概要。バックエンドの部分が他社にない特徴だという

デモンストレーションではマイクロソフトの基礎研究機関である“Microsoft Research”における研究成果として、英文テキストの音声合成による読み上げ技術を披露した。まだ研究中ということだが、ただ単語を正確に発音するだけでなく、文章の構造を解析して、例えば文章中の“more”を強く発音するというような、抑揚のついた読み上げを行なっていた。また.NETフレームワークに関連し、C#とVisual Basicという別の言語で書かれた2つのプログラムが、1つのプログラムのようにシームレスに走ることや、XMLを介して、ウェブ上で提供されているサービスをプログラムの中からサブルーチンのように利用する、といったデモンストレーションも行ない、.NETによってもたらされる可能性の大きさをアピールした。

.NETのデモ
.NETのデモプログラム。郵便番号を入力すると、近くの店の情報と距離を表示するもの。店の郵便番号などの情報データベースと、2つの郵便番号からその距離を計算するという、2つのウェブサービスを連携させ、1つのサービスとして利用できる
学生の質問に答えるバルマー氏
学生の質問に答えるバルマー氏

スピーチ後の質疑応答の際には数人の学生が質問に立った。オープンソース系開発手法についてコメントを求められたバルマー氏は「マイクロソフトも研究機関向けにWindowsの一部ソースコードの開示も行なっている。またオープンソースの成功は既存分野に限られており、新しいものについては出てきていない。我々は年60億ドル(約7300億円)の開発費をかけ革新的な技術を生み出している」と答えた。また、マイクロソフトが携帯電話の部分で後手に回っているということに関連して「iモードのように、これまでなかった市場が突然出てくるということを恐れているのでは?」という質問も出たが「恐れてなどいない。新しい技術が出てくるのを恐れるようなら、ITの仕事に関わるべきでない」と声を大にして答えていた。

今回のシンポジウムには、東京大学の学生、職員のほか、他大学や一般の人々も含め約700人が出席しバルマー氏のスピーチに聴き入った。バルマー氏の基調講演後は、東大大学院情報数理工学系研究科の教授らが研究成果の概要について披露した。

東京大学大学院情報理工学系研究科助教授の黒橋禎夫氏東京大学大学院情報理工学系研究科助教授の黒橋禎夫氏。マイクロソフトと共同研究し、4月にサービスを開始した“ダイアログナビ”について説明した

マイクロソフトは当初、国内の大学との共同研究プログラムは東京大学とのみ行なっていたが、3月には国内大学との共同研究や技術提供、人材の交流など幅広い連携を推進する“University Program”を発表し、現在は東大以外に、京都大学や早稲田大学とのプログラムが進んでいるという。

“ダイアログナビ”のデモ
黒橋助教授の“ダイアログナビ”のデモ。質問の話し言葉による文章の構造を解析し、適切な応答を返すシステム

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