Windows CEベースの独自OSを搭載したカシオ計算機のPDA「CASSIOPEIA l'agenda」シリーズは、高機能化が進むPocket PC機に対して、機能を必要最小限に絞り込み、PIMと通信機能の使いやすさを追求したのが特徴だ。同社はWindows CE 1.0の頃からHandheld PCの開発を行っている古参メーカーであり、「Pocket PostPet」などCEを独自にカスタマイズしたモバイル機器を手がけるなど数多くのノウハウを持っている企業でもある。ここでは、そんなカシオ計算機のノウハウが凝縮されたl'agendaの「カタログではわからない魅力」を紹介していこう。
Windows CEをカスタマイズして
低価格化を実現
背面上部には、Windows CEベースの機器であることを象徴する「Windows Powered」のロゴが浮き彫りにされている。 |
Windows CEは開発当初から家電や制御機器などの組み込みOSを含めた広い分野への応用を想定しており、機器の種類に応じて必要な構成を選択できる仕組みとなっている。このWindows CEに、ポケットサイズのペンデバイスに最適なGUIやアプリ、機能を組み合わせたのが「Pocket PC」(および、その最新版「Pocket PC 2002」)だ。Pocket PCの要求仕様は、Microsoftが決めており、その範囲はGUIや標準アプリなどソフトに関係した部分だけでなく、使用するCPUの種類、録音ボタンや赤外線ポートの位置などハードウェアに関するものにまで及ぶ。これは基本機能を共通化することで、異なるメーカーのデバイスでも高い互換性を維持するためだ。
しかし、Pocket PCは全体にハイエンド志向のため高価になり、メーカーのハードウェア開発の柔軟性が阻害されてしまうというデメリットもある。l'agnedaシリーズは、Pocket PC 2002ではなく、よりシンプルなOSとハードをカシオが独自に開発することで、機能と価格のバランスを追求した製品なのである。
ポケットに気軽に入れられる本体は
拡張性にも配慮
BE-500の本体サイズは67(W)×121(D)×17.9(H)mmと若干厚みがあり、Pocket PCと比較すると小さいものの、Palmデバイスよりは若干大きめといったところ。ただし、重量は158gと軽く、ポケットに入れて持ち運んでもさほどじゃまにはならない。本体はプラスチック製のため、金属外装を採用した他社のPDAに比べると高級感はないが、液晶を保護するためのフリップカバーも付いており、気軽にそのままポケットに入れて持ち歩けるデザインだ。
バッテリはリチウムイオン充電池を本体に内蔵する。日本HPの「hp jornada 568」のようにバッテリの交換はできないが、オプションで「外部電源パック JK-215LT」(価格8000円)も用意されている。BE-500の連続稼働時間は公称値で約6時間(文字入力1分、表示10分を繰り返した場合)。通信などを行うと、さらに稼働時間は短くなると思われるので、データ通信を長時間行いたい場合は、外部電源パックを併用したほうがいいだろう。
インターフェイスは、TypeII対応のCFカードスロット、ヘッドフォンジャック、シリアルコネクタが各1つずつというシンプルな構成だ。Pocket PCではCFとSDカードの2種類のスロットを搭載する機種が増えており、拡張スロットが1つでは物足りないと感じるかもしれないが、TypeIIのCFカードスロットがあれば、データのバックアップやCFカード型PHSなどを差し替えて利用できるので、通信やPIMを中心にPDAを活用したいユーザーには十分だろう。別売でバッテリ内蔵の「PCカードユニット JK-865PU」(TypeII対応、価格1万8500円)も用意されており、無線LANやモデムカードなど、PCカードサイズの周辺機器を活用することも可能だ。ただし、PCカードユニットはCFカードスロットを介して接続され、CFカードとPCカードスロットの同時利用ができない点は注意しておきたい。
l'agendaのインターフェイスはTypeIIのCFスロットとシリアルポート、ステレオサウンド出力×1と基本的にシンプルな構成。国内でニーズの少ない赤外線ポートや録音ボタンなどは省略されている。 |
l'agendaの基本操作はW字型に配置された4つのボタンとカーソルキーで行える。液晶の下側には、PIMや通信関係のアプリを起動するためのシルクボタンを装備している。液晶はSTN方式で3万色表示に対応。 |