ソニー(株)、仏トムソン マルチメディア社、米ヒューレット・パッカード社、三菱化学(株)、ヤマハ(株)、(株)リコー、オランダのロイヤル フィリップス エレクトロニクス社の7社は5日、都内で報道関係者を集め、書き換え可能なDVD“DVD+RW”の特徴や市場展望に関する説明会を開催した。席上、国内で初めてDVD+RWディスクを通常のDVDプレーヤーで再生してみせるデモが行なわれた。7社は5日、このプレス向けセッションに先立って、業界各社を集めて、DVD+RWについて説明するセミナーを開催している。
今回7社はアライアンスを組み、協同でDVDドライブ関連企業などに対してDVD+RWへの協力や規格への参加を促す説明を行なっているが、今のところ何らかの業界団体などを作る予定はないとしている。また各社はDVDフォーラム(※1)にも参加しているが、DVD+RWはDVDフォーラムとは関係のない独自規格となっている。
※1
DVD規格策定や普及、ライセンス管理などを行なう業界団体。(株)日立製作所、松下電器産業(株)、三菱電機(株)、ロイヤル フィリップス エレクトロニクス、パイオニア(株)、ソニー(株)、(株)東芝をはじめ230社以上が名を連ねている。
|
---|
三菱化学記憶材料事業部グループマネージャーの土屋淳氏 |
はじめに7社を代表して挨拶した三菱化学記憶材料事業部グループマネージャーの土屋淳氏は「今年、DVD-ROMドライブとDVDプレーヤーは合わせて1億7000万台まで普及する。米国では一般家庭の15%に何らかの形でDVDプレーヤーが入り込んでいるというデータもある。もはやDVDは一部のマニアが使う技術ではなく一般の人が使うものだ。そのときに一番重要なのが“互換性”だ。DVD+RWは既存DVDプレーヤーやドライブとの互換性が高いため、DVDプレーヤー/ドライブの普及率はDVD+RW普及の大きな要因となる。これはCD-RWの時と同じだ」と、直接比較はしなかったものの、先行するDVD-RAMやDVD-RWに対して、既存ドライブ/プレーヤーでの再生互換性が高い点を強調した。
|
---|
リコーの松井猛氏 |
|
---|
DVD+RWフォーマットの特徴を示す図 |
続いてリコーの松井猛氏がDVD+RWの特徴について説明した。松井氏はリコーでCD-RW事業にかかわってきた経験から「既存のプレーヤーで再生できることが普及の鍵になる。また、パソコンと家庭用ビデオ機器を繋ぐフォーマットとして、パソコンで編集したディスクが家庭用のDVDプレーヤーで再生できることが重要だ」と述べた。DVD+RWが既存のプレーヤーと再生互換性が高い理由として
-
物理特性がDVD-ROM、DVD-Videoフォーマットと共通
-
セクター/ブロック構造、アドレス構造、データトラック構造がDVD-ROMと互換
-
既存ファイルフォーマット準拠
という3つの理由を挙げた。そしてフォーマットとは別の要素として“使いやすさ”も必要であるとした。この使いやすさとは、家庭でオリジナルのDVD-Videoを作成する際、ランダムに編集を行なっても、きちんとDVDプレーヤーで再生できるといったことを指している。これが、再生互換性に加えて、普及のポイントであるという。
|
---|
DVD+RWとDVD-ROMの物理仕様比較 |
|
---|
DVD+RWとDVD-ROM、DVD-RW、DVD-RAMとの記録面の状態比較 |
|
---|
DVD+RW、DVD-ROM、DVD-RAMの記録トラックとレイアウトの比較 |
最後に日本で初めてという、DVD+RWのデモンストレーションが行なわれた。デモでは、フィリップス製のDVD+RWビデオレコーダーで録画と再生、そのディスクを松下電器製のDVDプレーヤーに入れて同様に再生できることを示した。次に、パソコン上でリコー製DVD+RWドライブを使って、DVD-Videoフォーマットのディスクを作成し、それを別のパソコンの(DVD+RWではない)DVD-ROMドライブでも正常に再生できることを示した。さらに最後に、DVD+RWビデオレコーダーで作成したディスクをパソコンのDVD-ROMドライブで、パソコンのDVD-ROMドライブで作成したディスクをDVD-Videoプレーヤーで再生するというデモが行なわれた。いずれも、まったく問題なく再生され、うたい文句である再生互換性の高さを印象づけた。ただし、記者から、いったいどの程度の割合のドライブ/プレーヤーで再生できるのか? という質問が出たが、これに対しては「申し訳ないが数字は出せない。数字が出せない理由も明かせない」と拒否し、“大部分の”ドライブやプレーヤーで再生できる、という表現にとどめた。
|
---|
プラズマディスプレーに映し出される、DVD+RWに記録された動画像(再生はフィリップス製DVD+RWレコーダー/プレーヤー) |
|
---|
パソコンディスプレーに表示されるDVD+RWドライブの再生画像 |
先行する他のフォーマットに追いつけるか
DVDをベースとした書き換え可能ディスクのフォーマットとしては、'97年8月にDVDフォーラムで策定された“DVD-RAM”(※2)と、'99年春に同じくDVDフォーラムで策定された“DVD-RW”(※3)がある。DVD+RWもDVDフォーラムに書き換え可能DVDフォーマットとして提案されたものの、否決されてDVDフォーラムの標準規格とはならなかったが、'97年9月に今回の7社からトムソンを除いた6社の連名で“Phase-Change ReWritable”規格として発表された経緯がある。当初は記録容量3.0GBで、'98年中の製品化を目指していたが、技術的問題から製品化が遅れていた。その後容量を4.7GBとDVD-ROMと同等にし、2000年2月に開催されたCeBITや、2000年11月のCOMDEX/Fallなどで、試作機を使ったデモンストレーションが行なわれている。
※2
DVD-RAM:Ver.1.0:記録容量は片面2.6GB。'99年6月に容量を片面4.7GB、両面で9.4GBに増強したVer.2.0が発表されている。ドライブなどの製品は'98年以降、松下電器や日立から発売されている。
※3
DVD-RW:記録容量は片面4.7GB。パイオニアが'99年11月にDVD-RW方式で記録するビデオディスクレコーダー/プレーヤーを発売している。パソコンに接続できる業務用レコーダー/プレーヤーも発売している。ドライブ単体での製品は発表されていないが、1月に発表された米アップルコンピュータ社のPowerMac G4の最上位機にはパイオニア製のDVD-RWドライブが搭載されている。
|
---|
フィリップス製DVD+RWレコーダー/プレーヤー(下)と、松下製DVDプレーヤー(上) |
現時点では製品は発表されていないが、フィリップスが2001年第2四半期、ヒューレット・パッカードが第3四半期にDVD+RWドライブを投入することを明らかにしている。残りの5社も遅くとも2001年後半には製品を出荷する見込み。唯一のメディア専業メーカーである三菱化学はハードウェアの発売に出荷を間に合わせたいとしており、フィリップスの製品発表に合わせて製品を投入する見込み。メディアの価格については「ほかの書き換え可能なDVDメディアと競合できる価格」とするにとどまっている。
|
---|
リコー製DVD+RWドライブ(下) |
|
---|
リコー製DVD+RWメディア。リコー以外では三菱化学とソニーから発売の見込み |
DVD+RWは、資料や今回のデモを見る限りにおいては、既存ドライブやプレーヤーとの再生互換性も高く、価格も競合製品と比べてそう高くはならないと見込まれることから、一般ユーザーにとってなかなか魅力的に見える。ただ、今回の説明でも「DVD-RWは書き込んだ後のディスクについては、DVD+RWとの差はほとんどない」としており、差は“使いやすさ”の部分のみとなる。松下や日立などDVD-RAMドライブを発売する各社の中には、再生互換性重視の点からDVD-RWドライブも発売するという動きもあるようで、書き換え可能DVDフォーマットの決着がまだ数年かかりそうだ。