E90に見た、モノとしての完成度
ノキア社のケータイを使っていて最も感じる国産機との違いは、その堅牢さだ。ノキアに比べると日本のケータイはプラモデルのように思えてしまう。「道具 対 玩具」という対比表現が的確だろう。
E90は昨今、日本で流行のスライド型スマートフォンではなく、「パカッ」と本体が開く小型のクラムシェル型ケータイだ。本体重量210グラム。なんと筆者愛用のPHSであるウィルコム製「Tiny Talk」の3倍もある。
しかし、その堅牢な筐体はユーザーに絶大な安心感を与えてくれる。ケータイが「デリケートで超大事な愛用玩具」でないビジネスユーザーにとっては、取り扱いが極めて楽だ。本体の開閉を何千回と行ないヒンジ部分も異様なくらいの丈夫さだ。これはマイクロSD収納のスロット部分の蓋も同様だ。
E90の製品そのモノの完成度の高さを知ると、残念ながら、日本には伝統だった「マイクロメカ技術」が失われつつあると思えてしまう。
小さなモノを思い付きで作ることは得意だが、極めて壊れやすい。技術がないとか、技術者が居ないというわけではないだろうが、製品仕様を固めるプロダクトのプロデューサーが不在なのか、あるいはケータイに求めるユーザニーズが大人も子供も「ファンシーグッズ的」なのか、どれかだろう。
スマートフォンとして見た場合も、日本のキャリアやメーカーがE90から学ぶべき点は多い。開口時に露出するQWERTYキーボードは大人の指先でも極めて打ちやすく、ミスタイプは最小。加えて限りなく堅牢だ。液晶側の、アプリケーションと連携する機能キーの活用方法も洗練されている。ハードウエアを生かすソフトウェア、ソフトウェアを生かすためのハードウェア、両者の確実なコンビネーションは国産ケータイには見られない完成度だ。
昨今国内で流行のWindows Mobileではなく、Symbian OSを採用したE90だが、その製品としての完成度は前者を圧倒している。
先日、発売と同時にVAIO Type Pの購入を考えたが、OSがVistaなので見送った。OSはハードウエアリソースを最大限活用し、アプリケーションを際立たせるのが使命で、自らが前面にしゃしゃり出るモノではないと考えている。時代の変化を読めない、読みたくないマイクロソフト社のWindows MobileやWindows Vistaに不安を抱くのは筆者だけではないだろう。
今、ケータイ電話の世界ターゲット市場は、この地球を人口で圧倒する中国とインドだ。彼らは開発リソースの国であると同時に、世界最大のケータイマーケットなのだ。中国という巨大市場を前提に考えれば、欧米製品と言えども、「漢字表示機能」はスペックとして常識だ。一見してアルファベットしか表示できないように見える多くの海外版ケータイも「仮名漢字入力プラグイン」さえ開発すれば、日本語ケータイとしてごく普通に使用できる。
E90もそれは同様だ。仮名漢字変換の老舗である「管理工学研究所」が開発した「+J for S60」を導入するだけで、筆者のE90は日本語を難なく入力・表現出来ている。ケータイ世界も言語による国境は曖昧になってきた。もはや日本語化して発売するだけの付加価値しかないキャリアは不要なのだ。確実な保守と顧客サービスさえ出来れば、商社でも十分だ。
多くの善意の日本人ケータイ愛用者にとって、ノキア社の撤退は「敗退」をイメージするだろう。しかし、日本を早々に撤退した「ノキア・バイキング」は、中国・インドを平定して最大25億人のユーザを連れて、約700年前に日本に来襲したモンゴル帝国のように舞い戻って来るのかもしれない。
日本人として、「ノキアの不戦勝」だけは避けたいのだが……。さてあの時の「神風」は、今度も吹いてくれるのだろうか?!
今回の衝動買い
アイテム:Nokia Communicator E90(日本語対応版(SIMフリー)ハイグレードモデル限定セット 4GB)
購入価格:8万3790円
(モバイルプラザ)
T教授
日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
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