キヤノンは初心者や女性によりフォーカスした新たなシリーズ「PowerShot E1」を9月半ばに登場させる。1家庭に1台の時代を終え、1人1台の時代に突入するコンパクトデジカメ市場。E1の誕生はキヤノンが市場で確かな存在感を維持するための布石なのだ。
基本モジュールは共通化、コンセプトで勝負
PowerShotというと、男性向けの質実剛健なカメラという印象を持つ人がいるだろう。しかし、今回のE1はPowerShotにおけるハイアマチュア向けのGシリーズや、初心者が手軽に使えて値段も手ごろなAシリーズとは一線を画す。
キヤノンの高木計人氏は「IXY、PowerShotに続く新ブランドを立ち上げてもいいほど、いままでの製品とは違う。まずは市場の反応をうかがうため、販売戦略上PowerShotを採用したが、コンセプトはまったく新しいもの」と強調する。
E1のコンセプトは「リラックス、カジュアル」がテーマ。
このE1の特徴は2つある。1つはPowerShot Aシリーズとまったく同じ機能を載せたこと。もう1つはコンセプトを徹底するためのユーザーインターフェースにこだわりを見せていることだ。
E1は1000万画素以上の画質や光学4倍ズームといった基本的な機能のほか、初心者でも撮影時や再生時に迷うことなく操作ができる「らくらくモード」を搭載。動画は毎秒30コマ、640×480ドットの撮影が可能。機能面の詳細は下記を参照して欲しい
PowerShot E1の主なスペック | |
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製品名 | PowerShot E1 |
撮像素子 | 1/2.3インチCCD(有効約1000万画素) |
レンズ | 光学4倍ズーム |
焦点距離/開放F値 | 6.2~24.8mm(35mm換算で35~140mm相当)/F2.7~5.6 |
ISO感度 | 80~3200(ISO 3200撮影時の画像は200万画素相当) |
液晶ディスプレー | 2.5インチTFT(約11.5万ドット) |
記録メディア | SDメモリーカード(SDHC対応)/マルチメディアカード |
撮影可能枚数 | 単3形アルカリ乾電池:約220枚、単3形ニッケル水素電池:450枚(液晶ディスプレーON) |
本体サイズ | 幅101.2×奥行き31.4×高さ63.8mm |
重さ | 160g(本体のみ) |
中身は質実剛健なPowerShotそのまま
実は、このE1は9月上旬に同時発売される「PowerShot A」シリーズの最新機種「PowerShot A1000 IS」とまったく同じ性能なのだ。
コンパクトデジカメの市場はすでに機能面での差別化が難しく、同質類似化が進んでいる。最近であれば、どのメーカーでも手ぶれ補正や広角レンズといった機能は欠かさない。
高木氏は「デジカメは家庭に1台の時代から、1人1台の時代になりつつある。ユーザー1人ひとりの感性に合うことが大切で、機能を満載しても使っていただけなかったら意味がない」と指摘する。
同じ性能の製品をあえてEシリーズという違うラインナップで展開する。機能面ではなく、コンセプトに対する「共感」を売りにした競争軸でユーザーの獲得を狙っているのだ。