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投資ブームに振り回されるな!!

間違わない投資信託選びそのノウハウを一挙公開

2007年10月25日 00時00分更新

文● 渡辺賢一(フリーライター)

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月刊アスキー2007年9月号

間違わない投信選び

間違わない投信選び

 個人の資産運用が「貯蓄から投資へ」とシフトしている。特にここ数年、人気を高めているのが投資信託(投信)だ。預金と違い元本保証はないが、運用成績次第では預金金利を大幅に上回る利回りが期待できることが人気の理由だ。

 例えば、金融情報の評価・提供をしているモーニングスターの調査によると、今年5月末までの1年間で最もリターンの大きかった中国株式投信の運用利回りは128・53%。運用利回りの高い投信トップ20は、軒並みBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)など新興国の株式を中心に投資するタイプで、いずれも60~120%の高い利回りを実現している。

 比較的リスクの低い国内債券を中心に投資する投信でも、トップ20のリターンは1・78~3・69%。100万円を1年間預けても、たった2000円の利息しか付かない普通預金(年利0・2%)を嫌い、投信を買いたいと思う人が増えても不思議ではないのだ。

 一般向けに販売される公募投信の2007年5月末の純資産残高は78兆5000億円。過去3年半で約2倍となった(社団法人投資信託協会調べ)。株式市況が好調だったせいもあるが、投信の購入者が急増していることも理由だ。

悪質な販売行為も目立つ

 また、1998年に、銀行による投信の窓口販売(投信の銀行窓販)が解禁されたことも急増した理由だ。当初、元本の保証がないリスク商品の取り扱いに対し、多くの銀行が販売をためらっていた。しかし、投信の販売手数料が新たな収益源として期待されたため、積極的に販売を繰り広げたのである。2005年8月には銀行窓販での投信の販売が全体の50%を突破。同年から郵便局での投信販売もスタートした。

 しかし、営業成績を向上させようと、投資家の利益を軽視して手数料の高い投信を売りつけたり、頻繁に買い換えさせて、手数料を何回も取ろうとする悪質な販売行為も目立ってきた。国民生活センターに寄せられた投信販売に関する苦情は2006年度で980件と、3年前の約2倍にも上っている。

 今年6月には三菱東京UFJ銀行が、投信販売で不適切な事務処理を行ったとして金融庁から業務改善命令を受けた。顧客の注文と異なる投信を誤って販売し、本来なら損失補てんすべきなのに謝罪で済ませるなど、顧客軽視の態度が目に余ったからだ。

 投信販売業者には、商品の内容、リスク、契約の形態などを明確に説明する義務が法律で定められており、今年9月に施行される「金融商品取引法」には、顧客の投信に対する知識、経験、財産状況だけでなく、購入する目的もきちんと考慮して商品を勧めることが明文化される。とはいえ、自己防衛のためには、買う側も明確に投資の目的を決め、自分なりに知識を蓄えて、不適切な投信を押し付けられないようにすべきだろう。

利回り追求なら再投資型 コストにも注目する

 だが、現在国内で販売されている投信の数は、随時購入・解約できる追加型の株式投信だけで2379本もあり(2006年4月末、投資信託協会調べ)、その中から、自分に合った投信を選ぶことは不可能に近い。

 では、投信初心者は何から始めればよいのだろうか。

 モーニングスターの朝倉智也・代表取締役COOは、「商品を選ぶ前に、まずは運用の目的と目標を定めること。例えば、子供の教育資金として蓄えた100万円を5年後に倍の200万円まで殖やしたいのであれば、年利回りは約14・9%になります。このように年利回りを逆算すれば、あえてハイリスクハイリターンの投信を選ぶ必要はなくなります」と語る。 年利回り100%前後の中国やインドなど新興国株の投信が人気だが、リターンの大きい投信ほど、大幅元本割れなどのリスクも大きいのが常識。欲をかかず、人気に惑わされず、身の丈に合った投信を選ぶのがポイントといえそうだ。

 そのうえでリターンが追求できる株式投信や、安定性の高い債券投信などをバランスよく組み合わせ、リスク分散を図ることが大切である。

 朝倉氏は「最近、株式と債券の両方に投資するバランス型投信が人気ですが、ひと口にバランス型と言っても、株式の組み入れ比率の高いものや、債券中心の安定性重視のものなどさまざまなタイプがあります。そのため、目論見書などで内容をきちんと調べることも必要です」という。

 また、投信には、毎月や隔月などの決められた期間ごとに利益が分配金として受け取れるタイプと、分配をせず、利益を元本に加えて再投資するタイプがある。分配型は定期収入を得られるのが魅力だが、利益を取り崩さず運用に回す再投資型のほうが長期的な運用利回りは高くなりやすい。そのため、若年層などは分配金として受け取ると不利になる場合もあるので注意が必要だ。

 さらに、運用実績ばかりに目を奪われず、コストにも注目したい。「購入時にかかる販売手数料は1回きりですが、保有時にかかる信託報酬は毎年1回徴収されます。年1~1・5%(投信や販売会社によって異なる)ですが、5年間保有すれば5~7・5%と決して安くはありません」(朝倉氏)。

 同じ投信でも、販売会社によって手数料が異なるケースもあるというから、販売会社選びも大切になってくる。

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