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やっぱり5倍速い? 新『AirMac Extreme』の通信速度を検証

2007年02月07日 18時00分更新

文● 小口博朗、編集部

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AirMac Extreme ベースステーション

『AirMac Extreme ベースステーション』

アップルコンピュータ(株)は2日、『AirMac Extreme ベースステーション』の出荷を開始した(関連記事)。

新しいベースステーションは無線通信の規格として、IEEE 802.11a/b/g/ドラフトnの4種類を採用。アップルのウェブページによれば、ドラフトnは規格上、802.11gと比べると最大5倍のパフォーマンスを実現できるという。

ユーザーとしては、果たして5倍の通信速度が達成可能なのかどうかが気になるところだろう。

結論から言えば、ドラフトnと802.11gの速度を比較した場合、3.2倍程度の速度差を確認できた。早速、その詳細を見ていこう。



管理ソフトも一新!


新しいAirMac Extremeベースステーションの設定には、付属ソフトの『AirMacユーティリティ』を使うことになる。これは旧AirMac Extreme、およびAirMac Expressベースステーションで使っていた『AirMac 管理ユーティリティ』とは異なるソフトだ。

新旧管理ソフト

管理ソフトは中央上の『AirMacユーティリティ』を利用。旧AirMac Extremeベースステーション用の『AirMac 管理ユーティリティ』は使えない

メイン画面

AirMacユーティリティを起動した画面。ベースステーションを選んでダブルクリックすると、設定画面が開く

AirMacユーティリティにある設定の中で、速度に関係してくるのは、通信規格を選ぶ“無線モード”という項目。既存の802.11b/gとの互換性を持たせるか、それともドラフトnのみの機種で接続するかといった通信方法に加えて、2.4GHz/5GHzという通信帯域を決められる。

設定画面を開いたところ。“無線モード”メニューは“AirMac”タブの“ワイヤレス”にある

項目名 通信帯域 対応規格
802.11b/g互換 2.4GHz 802.11b/g/ドラフトn
802.11n専用 (2.4GHzを使用) 802.11nのみ
802.11a互換 5GHz 802.11a/ドラフトn
802.11n専用 (5GHzを使用) 802.11nのみ

今回の検証では、“802.11n (802.11b/g互換)”と“802.11nのみ (5GHz)”の2モードを利用。ドラフトn/802.11gという規格と、2.4/5GHzという帯域の違いで、通信速度に差が出るかを調べるのが狙いだ。

テスト機として用意したのは、『AirMac Extreme 802.11n* Enabler for Mac』(参考記事)を適用した24インチiMac-2.16GHzと、802.11b/gに対応する15インチMacBook Pro-2.0GHzの2台。

802.11gとドラフトnの速度比較は、本来、24インチiMacのみでテストできればベストなのだが、iMacをAirMac Extreme 802.11n* Enabler for Macでアップデートした後、802.11gに戻す方法が締め切りまでに見つからなかったため、比較対象にMacBook Proを用いた。



50Mbps超のスループットも!!


まずはウェブサイト上で利用できる3つのスピードテストサービスを使って5回テストを行ない、その平均値を出した。通信回線はBフレッツで、アクセスポイントからMacまでの距離は約3m。テストに使ったサービスとその結果は以下のとおり。

ベンチマーク結果

3つのスピードテストにおける通信速度のベンチマーク結果

どのベンチマークテストでも、MacBook ProよりiMacのほうが2.5倍以上速いことがわかる。

同じiMacで、無線モードをドラフトnのみ(5GHz帯域)とb/g互換モード(2.4GHz帯域)で切り替えた場合を見てみると、上記のテストでは劇的な差が現れなかった。


ただし、検証を行ったのは、アスキー社内で5つの無線LANアクセスポイントが見える場所。これらのアクセスポイントには数十台のマシンが無線で接続しているため、AirMac Extremeベースステーションと2.4GHz帯域で通信する際、チャンネルが競合して速度が低下する可能性もある(参考記事)。

別の日に、同じiMac/スピードテストでドラフトnのみとb/g互換モードの通信速度を比較したところ、5GHz帯が31Mbps前後でスループットが安定していたのに対して、2.4GHz帯域は16Mbpsでときおり速度低下が起こっていた。

グラフの値はあくまでそのときの検証時のもので、実行時のトラフィック状況に応じてパフォーマンスは常に変化することに留意してほしい。

逆に、例えば集合住宅などで近隣にアクセスポイントが複数あるような場合でも、5GHz帯を利用する無線LANアクセスポイントが少なければ、チャンネル競合によるテータ転送速度の低下は防げるというメリットもある。



ファイル転送では4倍以上の速度向上


新AirMac Extremeベースステーションには、USB 2.0でHDDを接続し、ファイルサーバーとして利用する機能が用意されている。この使い勝手に関しては別の記事で詳しくレポートする予定だが、ここではまず、そのパフォーマンスを計測してみた。

『AirMacディスクユーティリティ』の画面

『AirMacディスクユーティリティ』の画面

テスト機は24インチiMac-2.16GHzとPowerBook G4-1.33GHzで、OSはともにMac OS X 10.4.8。ファイルサーバー上に用意した1GBのディスクイメージファイルを、Finderを使ってMacにダウンロードするのにかかった時間を計測した。結果は以下のとおり。

『AirMacディスクユーティリティ』の画面

1GBのファイルをダウンロードするのにかかった時間。分数に直すと、上から4分11秒、5分36秒、17分38秒となる

ドラフトn専用モードと802.11b/g互換モードの差こそ約1.3倍と大きくは違わなかったものの、802.11g接続のPowerBookと比べると最大で約4.2倍もの速度差となった。

時間にして13分となると、日常的にファイルサーバーを利用している人にとっては大きな性能の向上だろう。


さて、新しいAirMac Extremeベースステーションを使うときに忘れてならないのは、802.11nに対応するのがCore 2 Duoを搭載する最新の機種のみという点だ(参考記事)。

新AirMac Extremeベースステーションを導入し、b/g互換モードで802.11b/g/ドラフトnの機器を混在させて使う場合、周囲の電波状況によっては、思ったほどパフォーマンスが向上しないこともある。

ドラフトnのみの安定した高速通信を享受できるのは、最新のMacと新型ベースステーションを同時に揃え、ドラフトnのクローズドな無線LAN環境を構築した人のみの特権といったところだろうか。

なお、 無線接続の有効範囲について、Appleが公開している802.11nの紹介ページでは従来の2倍と紹介している。

編集部内で検証したところ、旧AirMac Extremeベースステーションでは半径約30m程度で接続が切れてしまうのに対し、新AirMac Extremeベースステーションでは実際に倍程度の距離からも接続できることが確認できた。



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