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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第16回

まさかの「人間ボーカロイド」 プアミルクの奇妙な音楽論

2010年02月20日 12時00分更新

文● 四本淑三

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悲しいとか切ないとか、そんな気持ちは興味ないです

―― あずきさんは、プアミルクの前は何をやっていたんですか?

あずき バンドでギターです。今も4つくらい(バンドを)掛け持ちしています。立って弾けないので、椅子に座って、こう(右手を水平に動かして)なんです。こう(右手を縦に動かして)弾かないんです。だからピックが削れていくんです。そして粉がかかるんです。

―― ……ううむ。音響系みたいなバンドなんでしょうか。

人骨 僕もあずきくんと一緒のバンドやっていたんですけど、人が真面目に和音弾いてるのに、みんなノイズしか出さないんですよ。でもカラオケに行ったら歌が上手かったので、プアミルクに誘ったんです。

あずき ボーカルはそれまでやったことはなかったんですけどね。

―― それは意外。じゃあ最初に歌ったのはどの曲ですか?

あずき 「ときどき」※2って曲です。



人骨 そう、万葉集風の。万葉集はすごい好きなんです。「うろこ雲」※3が美里町※4なのもそこに理由があって、行ったこともないのに曲だけ作ったんです。四千五百首を見ると関東の歌が沢山あってですね、益荒男(ますらお)振りの……。

あずき 語りだしたよ……。

―― ……という端正な言葉選びと同時に、エログロでデタラメな歌詞も魅力です。

人骨 僕はスティーリー・ダンが大好きなんです。音楽はものすごくおしゃれなのに、歌詞が最悪※5。それはアメリカだと許されるんだけど、日本だとアングラに潜ってしまう。日本でアングラ系の歌詞を叫ぶ人たちは、音楽もアングラなんですよ。

―― それは確かにそうですね、なぜか。

人骨 そもそも街で流れているラブソングみたいなものは、僕の頭の中には一切ないです。悲しいとか切ないとか、そんな気持ちは興味ないです。

※2 ときどき : 初期キング・クリムゾン風で淡々としたアレンジで聞かせる1曲

※3 うろこ雲 : 美里町を舞台とする、プアミルクとしては例外的に泣かせる和風ロック

※4 埼玉県児玉郡美里町 : 万葉遺跡として「さらし井」「大伴部真足女遺跡」がある

※5 おしゃれなのに歌詞が最悪 : 「プアー・ハート・アタック」は、プアミルクの全作品中最もひどいスティーリー・ダンの影響を感じる

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