就職活動を控える学生・若手ITエンジニア必見の人事担当者インタビューをお届け!
“高度IT人材”獲得について企業へ取り組みを尋ねると「日本が求めているこれからのITエンジニア像」が見えてくる
2021年07月08日 20時00分更新
大日本印刷株式会社:チームと共にスキルで課題解決できるエンジニア人材を求める
出版印刷や商業印刷物、身近な製品の包装などでおなじみのDNP(大日本印刷株式会社)だが、現在の事業領域を尋ねると、DNPは印刷と情報の強みを掛け合わせて幅広い分野に事業展開をしており、現在では事業のさまざまなところでITが活用されているという回答。印刷会社という印象からか、学生さんから「AIをどのような用途で活用しているのか」と質問されることもあるそうだが、むしろ「AIなしに、いまどうやっていくのか」という状態なのだという。
ITエンジニア職を志望する場合、新卒においては技術系の総合職としての採用となる。特定の分野に特化しているだけではなく、自ら描いた未来を見据えて、AIやプログラミングの知識などを活かしていきたい方を採用したいと考えているとのこと。DNPは『未来のあたりまえをつくる。』というブランドステートメントを掲げており、それに見合う人材の獲得を重要視しているのだそうだ。
中途採用は事業で必要としている役割(ポジション)に特化しており、「これを担いたい」という人の採用。ITエンジニア職で⾔うと次の2分野において、特に優秀な⼈材を求めているという。
ひとつは、生活者の意思のもとでパーソナルデータを預かり、預かったデータを生活者の同意を取得した上で、どの企業にどの情報を渡すか管理運用する「情報銀⾏」事業。もうひとつは、購買履歴・⾏動履歴を取得・管理・分析することで、顧客にとっての最高の体験価値を追求し、最適なコミュニケーションを実現する「デジタルマーケティング」事業だ。
新卒・中途採用ともにITエンジニア職を志す人材へ必要とするのは、ビジネスの課題や得意先の顧客の課題、ソーシャル課題を捉え、それを解決するための論理的な思考能力。さらにデータを分析・洞察する能力も必要だという。
開発の現場はアジァイル開発にシフトしており、スクラムでチームとして課題を解決していこうとしている。スクラムでは全体としてデザインシンキングを活用しながら、課題の本質を共有するという考え方をする。技術系の面接官も担当する和田氏は「だからこそプログラマーであっても言われたことをやるだけなのではなく、チームと一緒になって、自分の得意分野であるプログラミングによって課題解決していくことが大事」だと語った。
DNPは、非常に大きな事業フィールドを持っている会社。国と一緒にやっている仕事もある一方で、小さなお店と一緒に取り組むような企業活動まである。どんなフィールドであれ、何らか活躍できる場所を提供できる会社なので、ものづくりに興味がある人は是非来てほしいということだ。
TIS株式会社:ITアーキテクトやフルスタックエンジニアを積極的に採用中
総合ITサービス企業であるTIS株式会社では現在、社会解決の課題をテーマとしたテレビCMを打ち出したり、Fintanというサイトで技術情報や実際の働き方をオープンにしたりするなど、企業広報についても多岐にわたるアプローチを実施しているとのこと。エンジニア職として求める人材を尋ねると、ITエンジニアの採用を担当する田伏氏は「2軸に分かれる」と語る。
ひとつはシステムを設定・構築できるITアーキテクト人材。従来の受託開発のほか、新たにサービスを開発するシーンにおいても不可欠で、引っ張りダコの状態だとのことだ。
もうひとつは、フルスタックエンジニアだ。近年はサービス開発のスピードについていくためにアジャイルで開発するニーズが高まっており、技術も多様化している。こうしたなか、一人でさまざまな技術をもち、自分で技術の選定もできるし開発もできるようなエンジニアが必要とされているそうだ。
こうした人材は社内においても強い需要があり、顧客の課題解決に日々取り組む、いわゆる「現場部門」からも、技術のエキスパートとして常に声が掛かり続けているような状態なのだという。
そこでTISではITエンジニア志向の高い学生を射止めるため、新卒向けには「ちょっといけていない仮想的なシステムをチームで取り組んで直していく」という擬似的なチーム開発をインターンとして用意している。
また中途採用についても、経験がありすぐに即戦力となる30代は市場の競争が高いため、若くてもOSSへのコントリビュートやイベントに参加している人などは、多少経験が浅くても、これからの成長を見込んで積極的に採用しているとのことだ。
求める人材は、周りとの関係をきちんと作り、みんなで決めたことに対してやりきれる人。技術力については、あるに超したことはないが、新卒の場合は技術力だけがすべてではなく、仮に技術力がなくても、チームのなかで自分がどう立ち回りができるか、コミュニケーションをとって皆をリードしてゴールに向かって推進できるヒューマンスキル的な力も確認するという。
日鉄ソリューションズ株式会社:技術力を社会課題解決へとつなげられるものづくり人材を評価
日本製鉄という技術とものづくりを重んじる企業グループに属する日鉄ソリューションズ株式会社(以下、NSSOL)は、新卒採用のうち80パーセントが理系、そして90パーセントがエンジニア職であるというSIerだ。
採用担当を務める鹿島氏にITエンジニア採用について尋ねると「プログラミングできない人はSEとしての活躍にはつながりづらい。文系でプログラミング経験をお持ちでない志望者も選考に参加されてはいるが、技術への志向性は厳しく確認している」と回答を得た。
出自が製鉄業というものづくりの会社なので、技術力・実装力をエンジニア志望者に対しては重視。SIerは協力会社のプログラマーやエンジニアを管理するプロマネ的な仕事がメインというイメージを持たれることも多いが、NSSOLのエンジニアは実装力を大事にしており、新卒入社後2〜3年は育成も兼ねて実装する業務を経験してもらうのだという。このため面接でも「プログラミング習得度や、IT技術に興味・関心があるかどうかを何度も確認する」(鹿島氏)とのことだ。
ITエンジニア人材として注目しているのは、アジァイルまでできるトップクラスの人材。これからのNSSOLにおける事業を牽引できるような、プログラミングを使った社会課題を解決したり、学生時代から成果物を誰かに利用された経験があったりする、貴重な能力を持っているITエンジニアを探しているのだという。実際こうした人材はこれまでの採用活動だけではなかなかアプローチがしづらいため、NSSOLでは「こんなものを実装した」というプレゼンテーションに対して企業側から求人者へアプローチしていく「逆求人」のイベントなどで人材発掘しているとのこと。「逆求人イベントに参加する企業の多くはWeb系の企業。SIerである当社は珍しがられることも多い」(鹿島氏)が、希少なITエンジニア人材を積極的に採用したいと試みているそうだ。
NSSOLでITエンジニアとして仕事をすることの魅力を尋ねると、コンサルから実装まで幅広く手がけられることが挙げられた。Web系企業の場合は自社サービスに仕事が限られることに対して、SIerであるNSSOLなら、転職することなくさまざまなお客さんのプロジェクトに参加できる魅力があるということだ。