楽天は大丈夫か。
最近、日本を代表するインターネット企業である楽天グループをめぐって、先行きを心配する声を耳にする。
楽天グループが2024年2月14日に発表した2023年度の通期の決算は、3394億円の赤字だった。
1年を通じた決算が、赤字となるのは5年連続だ。このニュースを報じる報道各社の記事の見出しもやはり、「赤字」が強調されている。
日本経済新聞「楽天G最終赤字5年連続 23年12月期無配、携帯足かせ」
NHK「楽天グループ決算 最終損益3394億円の赤字 5年連続の赤字に」
しかし、報道各社は「5年連続赤字」をニュースと判断したが、マーケットは異なる反応を見せた。
翌2月15日は楽天グループ株が買われ、一時は前日と比べて16%高のストップ高となった。
決算を報じるニュースだけを情報源としていると、楽天グループの先行きについて悲観的な見方になってしまうが、マーケットの動きは悲観論だけでは説明がつかない。
グループの現状を、もう少し踏み込んで知っておく必要がありそうだ。
基地局建設でふくらむ社債の償還
すでに周知の事実ではあるが、楽天グループが5年連続の赤字となった要因は、モバイル事業への進出だ。
楽天モバイルは2018年に設立され、同年12月から携帯電話の基地局の建設をはじめた。
サービスを開始したのは、およそ4年前の2020年4月のことだ。
この間、はるか先を走るドコモ、au、ソフトバンクに追いつこうと、基地局を中心とした設備投資を重ねてきた。
設備投資が重なった結果、社債の借り入れがふくらんだ。2025年までに、総額7000億円規模の社債の償還が待っている。
2024年2月6日にも、18億米ドルの米ドル建ての社債を発行している。日本円に換算すると2674億円にのぼり、利率も年利11.25%と高利回りだ。
社債の発行目的を確認すると、「既存社債の返済」と決算短信にはっきりと書いてある。
携帯電話の基地局を建設する費用をまかなうため社債を発行し、その返済のため、新たに社債を発行しているというのが楽天グループの現状だ。
あらためて整理してみると、素人目には、楽天の先行きに悲観的な見方が広がるのも、当然であるように見える。
モバイルの現状は「悪くない」との見方
しかし、決算発表の翌日のマーケットは、むしろ「それほど悪くない」との受け止めから、大幅な株価の上昇につながったようだ。
楽天モバイルの売上は、約2249億円で、前年と比べて17.7%増加した。その他のモバイル関連の事業をあわせたモバイル分野全体の売上は3646億円で、前年と比べて3.9%増加している。
モバイル分野の収益の中心となる契約者数は、2023年末の時点で約596万回線になっている。
楽天グループは、2024年末までに損益分岐点となる800万回線を目指すという。
契約回線数が800万を超えてくれば、月々の売上が費用を上回り、いわゆる単月黒字が達成できる可能性があるということになる。
楽天は、契約者の獲得に向けて、新たな手を打っている。
2月21日には「最強家族プログラム」を開始。家族で楽天モバイルを利用すると、家族全員が100円引きとなる。
家族最強プログラムが適用されると、データ通信の利用料が20ギガバイトを超えた場合、利用料が税込3168円、3ギガバイトまでの場合は税込968円となる。
携帯キャリア事業で単月黒字化が視野に入ってきた現状に加え、本業のネット通販やクレジットカード、証券、銀行事業が好調であることを踏まえ、マーケットは、5年連続の赤字決算の発表にポジティブに反応したと理解できる。
ポイントは2024年末
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