10日ほど前、近所にある小児科のクリニックに出かけた。
地域で古くから診療を続けるクリニックは、なかなか評判がいいようで、いつもは子どもたちとその親でごったがえしている。
しかし、その日のロビーは、静かだった。
いま、東京や大阪を含む世界中にある町のクリニックで、似た光景が広がっているのだろう。
世界各地の病院で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が報じられているなかで、子どもも大人も気軽に病院に行ける状況にはない。
そんな中、3月末から4月第1週にかけて、オンライン診療を容認する流れが一気に加速している。
感染の拡大を防ぐうえでオンライン診療は有効な手段と考えられるが、難しいのは、実際に医師と患者が対面する方法と比べて、見落としや誤診のリスクが高くなる点だ。
各種の報道を確認すると、このリスクにどう対処するかが議論の中心であるようだ。
●原則、無診察治療は禁止
現行の制度で、オンライン診療についての考え方を定めているのは、2019年7月に厚生労働省が改訂版を公開した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」だ。
医師法によれば、原則として、医師は自ら診察をせずに、診断書や処方箋を出すことはできない。
かぜで病院に行くと医師は患者の話を聞くだけでなく、心音を聴いたり、耳や口の中をのぞいたりする。
指で患者の体に触れる「触診」や、患者の体をたたいてみる「打診」もある。
実際に患者と対面する診察では、医師は五感をフル活用して治療方針を決めていると言うことができそうだ。
これに対して、オンライン診療は、患者との会話や、カメラを通じた画像で、判断することになる。
現時点では、対面診療と比べて、オンライン診療では、医師が得られる情報は限定される。
このため厚労省の指針は、最初の診察については原則として対面ですべきだとしている。
ただ、この原則についても、例外となりうる状況は示されている。患者が離島や山奥に住んでいるといった場合、近くに医師がいないこともあり得る。
こうしたケースの場合は、初診であっても、オンライン診療が許容される。
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