PCメーカーとして世界シェア上位の座に位置するデル。近年はタブレットも積極的に展開しています。しかしスマートフォンを手掛けている時代もあったのです。わずか3年で撤退してしまったデルのスマートフォンは再び世の中に出てくるのかでしょうか? 同社のスマートフォンの歴史を振り返ります。
世界最大キャリアに賭けた市場への参入
1984年創立のデルは老舗のPCメーカーとして現在も毎年多くの新製品を出しています。しかしモバイル製品の歴史は浅く、ライバルのHPがiPAQシリーズを古い時代から出していたのに対し、デル最初のスマートフォンが登場したのは2009年でした。他のPCメーカーはWindows Mobile時代からスマートフォンを手掛けていましたが、デルは他のOSを採用しました。しかも市場への参入は特殊な方法を取ったのです。
2009年11月に発表された「Mini 3i」はグローバル向けではなく、中国向けでした。しかもOSは中国最大キャリアの中国移動(チャイナモバイル)が開発したOPhoneプラットフォームを採用したのです。OPhoneは同年7月に中国移動が発表したもので、中身はAndroidベースのカスタムOS。中国移動向けのメニューやサービスが用意されているほか、OPhone向けとAndroid向けのアプリがどちらも利用可能でした。
OPhoneはサムスン、LG、モトローラなどからも多くの製品が登場しました。これら大手メーカーは自社のAndroid端末をベースにTD-SCDMAへの対応など中国移動向けカスタマイズを施し、OPhone OSを入れて出荷しました。ところがデルはいきなり最初のスマートフォンとして、OPhone専用機を投入したのです。これは世界最大の通信キャリアでもある中国移動向けに端末を出すことで、他のPCメーカーと比べて大きく出遅れたスマートフォン市場で一気に挽回を取り戻そうと考えたからかもしれません。
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