niconico運営元ドワンゴが28日、「niconico(く)」(クレッシェンド)サービス発表会を開催しました。筆者もニコニコ生放送で発表会を見ていましたが、率直に言って、悲観的なコメントが目立ちました。
niconico(く)は今年4月17日に発表され、当初は10月に開始予定とされていました。しかし、10月30日に「11月28日にサービス発表会を開催します」と告知、事実上の開始延期を報告していただけに、発表会は最初からきびしい視線にさらされていたわけです。
同社代表 川上量生会長CTOは「画質と重さは完全解決したのか。本当に改善したのかというと現在のところ完全に解決はしていない」「スマホアプリの高速化、html5プレイヤーもflashよりは重い状態が続いています」と話しました。
以前からネガティブに言われることが多かった画質と重さの問題に関して「半年以内に解決」とされたのが、個人的にはかなり気になりました。早急にではなく、2018年もしばらくは悩まされるかもしれないとなると、ちょっと印象が悪い。
そして、現在のniconicoが動画ストリーミングサービスとして競合に対して遅れをとっているのでは……という指摘に対しては「どのサービスも最終的には同じになると思っています。その差をつけられることはこの先はなくなると思っています。ぼくらはちがうところで勝負をしていきたいと思っています」とコメント。
つまり、「画質と重さは解決の道半ば。新しい機能で競合と差を付けたい」というわけです。それを示すために、発表会の途中で、「続きは新機能で見てください」とURLを貼り、視聴者に新しいniconicoの体験をうながしました。ところが、これが見られるのがパソコンだけ。スマホでは視聴不可だったのです。
筆者としては、新サービスなのにパソコン・スマホ関係なく見られるようにしなかった(できなかった)ことに驚きました。どちらかといえばスマホ向けの新サービスが多かった発表会なのに、スマホで見られないのは、いかがなものか。
しかも、ニコ生視聴者の多くが移動先でスムーズに視聴できず、エラーが発生したり、「視聴人数限定で体験生放送をしております。空席ができましたらお入りいただけます」なる文言を目にしたり事態になりました。この現状を見せられてしまうと、「新機能を付けても、以前からの問題は解決していないじゃないか」と感じたとしても不思議ではありません。
低画質で動作が重い問題は解決していない。新しい機能は配信者向けなうえに、そもそもよくわからない。これでは不満が噴出しないほうがおかしい。ユーザーだけではなく、チャンネルにコンテンツを提供している企業にも、niconicoというサービスに不安を抱かせてしまったのではないでしょうか。
もちろん、「アカウントなしでも視聴可能にする」「高画質にする」「生放送の広告が配信者に収益化される」などのポジティブな方向を目指していく姿勢も示されたことを一切無視するのは、フェアではない。ただ、それが目に見える形で実感できなかったのは、やはり事実でしょう。
もしかすると、いままでのniconicoは、「インフラへの投資はなかなか収益や顧客の満足度につながらない、プレミアム会員の月額費徴収のほうが大事」と考えていた(もしくは、今も考えている?)のかもしれません。しかし現状、プレミアム会員(≒顧客)が減っている理由は、サービス内容の問題がメインではないように思えます。
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